2016 Fiscal Year Research-status Report
レーザー加熱相変態を利用した制菌傾斜機能合金の開発:アンカースクリューへの応用
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15K15717
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50400255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (10206766)
天雲 太一 東北大学, 歯学研究科, 助教 (80451425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Ti-Ag合金 / 機械的性質 / 生体適合性 / 制菌性 / 組織制御 / 傾斜機能 / 矯正用アンカースクリュー / チタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、レーザー局所加熱相変態を利用してTi-Ag合金を組織制御し、αプライム相(生体適合性優位)から共析組織(制菌性優位)へ金属組織を連続的に変化させた、制菌性傾斜機能合金の開発および矯正用アンカースクリューへの応用を試みる。 平成28年度は、合金組織制御の一例として、チタンにニオブと銅を添加したTi-Nb-Cu合金を設計し、それら合金インゴットを試作した。そして、試作Ti-Nb-Cu合金の金属組織観察とX線回折試験により合金相を同定するとともに、機械的性質(引張強さ、耐力、伸び、硬さ)を調べた。これら研究成果は、Ti-Ag合金を組織制御する際の参考とした。また、次年度の動物実験に備え、ビークル犬に埋入した試料をデンタルX線画像により経過観察するための補助装置を開発した。 【合金インゴットの試作】金属元素を設計した合金組成となるようにスポンジチタンとニオブ塊、銅片を秤量し、アルゴンアーク溶解炉を用いて溶解して、ボタン状の合金インゴットを溶製した。【試料の作製】引張試験用のダンベル型試験片と、硬さ、X線回折試験用の板状試験片を、歯科用チタン鋳造機で製作した。【機械的性質】直径3 mm、標点距離15 mm、引張速度0.5 mm/min、室温の条件で引張試験を行った。荷重1.961 N、荷重時間30 sの条件で硬さ試験を行った。【金属組織観察】管電圧30 kV、管電流10 mAの条件でCu Kα線を用いてX線回折試験を行った。鏡面研磨後にエッチングした試料を光学顕微鏡で組織観察した。【結果】Ti-18Nb-2Cu合金はα+β合金で、引張強さは850 MPa以上だった。また、そのとき延性を示した。Ti-Nb-Cu合金の強さと硬さの向上には、固溶強化とα+βの析出強化が関与していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
銀の添加量30 mass%までのTi-Ag合金の機械的性質と金属組織を調べ、組成と合金相と機械的性質の関係を明らかにし、組織制御するTi-Ag合金のベース組成と、目指すべき金属組織が決定した。また、圧延機を用いたインゴットの圧延加工(冷間加工)の実験により、加工度と硬さの関係や、割れや裂けの発生する限界加工度を知った。Ti-Ag合金で既知のα相や金属間化合物だけではなく、β相の金属組織も知った。さらに、動物実験で使用するデンタルX線撮影補助装置を開発した。これら成果は、原著論文として英文誌に受理された。追加の実験をしたため、進捗状況はやや遅れているが、これらは本研究の主題である金属組織制御を確実に行うことにつながるため、この遅れは次年度に挽回可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【圧延加工】圧延機を用いたTi-Ag合金インゴットの圧延加工を、割れや裂けの発生する限界加工度まで段階的に上げながら行う。各加工度における硬さと金属組織を調べ、加工度との関係を検討する。【真空熱処理】圧延により強加工したTi-Ag合金に対し、再結晶による結晶粒微細化と、共析反応によるTi2Ag の分散析出を目指し、真空熱処理を行う。熱処理温度と処理時間をパラメーターとする。X線回折と金属組織観察により組織制御を評価する。【レーザー加熱熱処理】真空熱処理により組織制御されたTi-Ag 合金に対し、レーザー溶接機を用いてAr ガスフロー環境でレーザー光を照射し、局所加熱熱処理を行う。印加電圧、周波数、パルス幅、ビーム径をパラメーターとする。X線回折と金属組織観察により組織制御を評価する。
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Causes of Carryover |
金属組織制御を確実に行うために、Ti-Ag合金で既知のα相や金属間化合物だけではなく、他の金属組織も知っておくべきと考え、平成28年度はβ相を含む新たな合金を試作し、その性質を調べた。次年度使用額が生じた理由は、最も費用のかかる熱処理を次年度に先送りしたためである。目指すべき金属組織やベースとなる組成が熱処理に先行して決定したため、実験回数が抑制され、効率化できたと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、熱処理に必要な消耗品類と、大量に必要となるTi-Ag合金の材料に使用する。
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Research Products
(4 results)