2015 Fiscal Year Research-status Report
競争的自己組織化結晶形成に基づく骨誘導性生体材料の創出
Project/Area Number |
15K15720
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上家 潤一 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (10400269)
鈴木 堅太郎 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (10747554)
穴田 貴久 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30398466)
松井 有恒 東北大学, 大学病院, 助教 (60547264)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体材料 / 表面 / 水和 / セラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はリン酸カルシウム化合物のうち,広くCa/Pモル比をとり得る非晶質リン酸カルシウムの材料学的性質の把握に注力した.予備的な検討で準備済みであった原料種,反応速度,反応器の異なる条件下で既に得ていた非晶質リン酸カルシウムにつき,結晶学的,分光学的に解析した.X線回折により,明瞭な回折ピークを示さないブロードなパタ-ンを示す非晶質材料の特徴とされるリン酸カルシウム群が得られた.これら非晶質リン酸カルシウムについて,フーリエ変換赤外(FTIR)分光法とラマン分光法により解析し,既に解析済みであった化学分析によるCaとPの化学組成との関連づけを検討した.FTIRについてはカーブフィッティングによるリン酸イオンの分光学的変化に注目し(Kobayashi K, Suzuki O et al. ACS Appl Mater Interfaces 6:22602-22611, 2014),加水分解および結晶化の進展との関連性について特定の波数のHPO4に帰属されるピークの分離と強度の関係性について明らかにした.ラマン分光による解析においても特定の波数のピークに着目することで,加水分解に関連してシフトするHPO4に帰属されるピークの同定と強度の変化について分光学的情報が得られた.また,HAの前駆体であるリン酸八カルシウムについても同様に解析を行い化学量論的組成からのずれ(非化学量論性)について分光学的な情報を得た.これらの情報を基にして,両者の複合化と結晶化による生体活性発現への影響についての検討に向け材料科学的な基礎データを整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
活性が高いと予想される複合相的リン酸カルシウムを非化学量論的リン酸カルシウム群から調整するにあたり,非晶質リン酸カルシウムとリン酸八カルシウム,また,これら材料の結晶化過程における化学組成と分光学的性質を明らかにしておく必要性が生じた.これらの検討は計画を遂行する中で解析および研究へのフィードバックを行っていくことを予定していたが,本研究の基盤となる情報であると判断し,既に予備的に得ていた材料を用いて初年度に集中的に解析を行った.そのため,細胞との相互作用についての検討は未着手となり,計画全体としての進捗はやや遅れていると判断した.一方,合成条件と結晶学的性質および分光学的性質の関連性について基盤的情報を蓄積できたことから,細胞との相互作用も含めた生体活性の評価が加速できる状況となったため,計画全体の完了に向け,今後に複数の検討項目を並行して進めることで対応する.
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Strategy for Future Research Activity |
生体材料として構成するため複数のリン酸カルシウム複合化による結晶化調節およびマトリクス材料との複合化を行い,材料学的な最適化を図る.その上でどのタイプのリン酸カルシウム相との複合化が細胞活性化を促すか調べる.またin vivoでの評価を行う.以上の検討からリン酸カルシウムの結晶成長と生体活性について関連付け,生体材料としての設計方法を取り纏める.
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Causes of Carryover |
本研究の基盤材料となる非晶質リン酸カルシウム,リン酸八カルシウムの性状について結晶学的,分光学的に詳細に把握した上で計画調書にある競争的な結晶成長について検討していく必要があった.これらのリン酸カルシウム,特に非晶質リン酸カルシウムは広い範囲の化学組成をとることから,生体材料設計に際して,予備検討にて合成済みであったこれら材料について,研究室の既存の設備を用いて材料学的な解析に注力した.特に化学組成と分光学的な関連性において情報が少ない非晶質リン酸カルシウムにおけるFTIRによるカーブフィッティングの検討を重ね,結晶化の指標となるリン酸イオン種の同定と解析方法の確立に注力した.これらの検討により予定していた実験検討に入れなかったが計画遂行に向けて十分な情報が得られたことから,予定している経費にて研究を遂行できる見込みとなっている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
複数の検討項目を並行して進め計画を遂行する.合成材料とマトリクス材料との複合化,in vitroおよびin vivoにおける生体活性の検討における消耗品等に経費を充当して使用する.
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Research Products
(3 results)