2015 Fiscal Year Research-status Report
GDNFを用いた下歯槽神経損傷後の感覚麻痺に対する積極的新規治療法の開発
Project/Area Number |
15K15748
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 綾乃 日本大学, 歯学部, 助教 (40731899)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
久保 亜抄子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70733202)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経再生 / GDNF / 下歯槽神経損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は末梢神経損傷部へのglial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)投与による末梢神経の再生機構を明らかにし、下歯槽神経損傷による感覚麻痺の新規治療法開発に対する多くの有用な基礎データを与えるものである。全身麻酔下にてSDラットの下歯槽神経を露出後切断し,下歯槽神経切断モデルラットを作製した。下歯槽神経切断12時間後から14日目まで,切断部組織におけるGDNF mRNAおよびGDNFタンパク発現が有意に増加した。そこで、あらかじめ薬剤徐放ゲル(MedGel)を皮下に埋め込み、下歯槽神経切断後切断部にGDNFあるいはVehicleを持続投与した。投与開始から機械刺激装置 (Digital fon Frey) を使用し,下歯槽神経支配領域(オトガイ部皮膚)への機械刺激に対する逃避閾値を経日的に計測した。下歯槽神経切断後,切断部組織へのMedGelを用いたGDNFの持続投与により,下歯槽神経支配領域への機械刺激に対する逃避閾値の回復が有意に促進された。 次に、GDNFの作用を抑制することにより、神経再生あるいは機能回復がどのように変化するかを明らかにするため、下歯槽神経切断直後から12時間おきに、抗GDNF受容体中和抗体を切断部へ注射による連続投与を行った。抗GDNF中和抗体の同時持続投与により,下歯槽神経切断後の機械刺激に対する逃避閾値の回復が阻害された。さらに、切断部の組織学的変化を電子顕微鏡学的に解析した。下歯槽神経切断後の再生過程におけるGDNF持続投与は、切断部の組織学的に変化を誘導しなかった。以上の結果から,下歯槽神経損傷後の下歯槽神経支配領域の感覚機能回復に対して切断部組織へのGFRα1を介したGDNFのシグナルは促進的に作用することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、交付申請書に記載した「研究の目的」に沿っておおむね順調に研究が進んでいる。また関連論文として、Low-intensity pulsed ultrasound accelerates nerve regeneration following inferior alveolar nerve transection in rats. Eur J Oral Sci. 2016 in pressも出版された。下歯槽神経支配領域(オトガイ部皮膚)への機械刺激に対する逃避閾値の計測は,浅麻酔下にて行う。本講座では顎顔面領域における機械的および熱刺激に対する逃避閾値の計測に関して,浅麻酔下にて頭板状筋の筋活動を指標とした計測法を確立しており,当講座の多くの大学院生が計測に熟練しているため効率的に実験を遂行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も交付申請書に記載した「研究の目的」に沿って研究を推進する。 早急に本研究の成果を発表する雑誌を選定し、雑誌の投稿規定に合わせたfigureの作成に取り掛かる予定である。さらに、本年度は、三叉神経節細胞に存在するオトガイ部皮膚投射ニューロンにおける体性感覚関連受容体の量的変化を免疫組織化学染色およびWestern blot法にて定量解析する。そのため、研究協力者(大学院生4名)に組織の摘出および前処理の協力を仰ぎ、効率的に発現量の定量解析を進める。
|
Causes of Carryover |
当初の予定より消耗品を安く購入することができたため、残金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度分として請求した助成金と合わせて、キムワイプの購入費用として使用を計画している。本年度は実験動物、薬品や実験器具といった消耗品費と旅費(歯科基礎医学会学術大会(札幌)と米国神経科学会(サンディエゴ)の使用を計画している。また、計画通りに実験が遂行できれば国際科学雑誌に投稿予定のため、学会誌投稿料も計上している。
|
Research Products
(2 results)