2015 Fiscal Year Research-status Report
食塊の易変形性に基づく食品の被嚥下特性評価法の開発
Project/Area Number |
15K15770
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 佳功 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40238035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪狩 洋平 東北大学, 病院, 医員 (10734270)
田中 恭恵 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50613064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食品 / 易変形性 / 潤滑性 / 粘膜 / 嚥下 |
Outline of Annual Research Achievements |
市販の即席マッシュポテトの水分量を重量比で60~85%の6段階に変えて調製し、4mlの円柱状に成形して、試験食品とした。屠殺直後のウシの食道から筋と粘膜下組織を除いた筒状の粘膜試料のなかに試験食品を入れ、幅20mm、深さ40mmの樋状の溝に入れ、幅19 mm、高さと長さ各20 mmのプランジャーを用いて、粘膜ごと試験食品を高さ5 mmまで圧平し、プランジャーが受けた反力を試験食品の易変形性の指標とした。圧平速度は10 mm/sとした。 またウシ食道の筒状の粘膜に試験食品を入れ、1.5 mmの隙間を隔てて平行に配置した直径8 mmの2本のローラーに挟み、粘膜ごと一定の力で牽引して試験食品をローラーでしごき出し、粘膜内の試験食品の移動速度を粘膜に対する試験食品の潤滑性の指標として求めた。牽引力は1.5 Nとした。 さらに、10名の若年健常成人の舌上に試験食品を載せ、咀嚼せず直ちに嚥下するよう指示し、嚥下の可否を、①たやすく嚥下できる、②どうにか嚥下できる、③嚥下できないの3段階で評価させた。各被験者は、同一水分量の試験食品3個を含む計18個の試験食品でこの試行を行い、各水分量の評価が①のみか①と②であれば「可」、③のみか②と③であれば「不可」、②のみであれば「中立」、①と③のみか①②③であれば「混乱」とした。 嚥下「可」の主観的評価は、水分量75%では10%、80%で60%、85%では90%と、75%以上で水分量に依存して増大し、これに伴い「不可」は減少した。「中立」は水分量75%で20%、80%で30%であり、「混乱」はなかった。 水分量75%以上で嚥下が「可」との評価が増すのと軌を一にして、試験食品の潤滑性は著しく向上したが、易変形性は単調に増し(反力は単調に減少)、嚥下可否の主観的評価との関連は乏しかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画と異なり、マッシュポテトのみを試験食品としたが、それ以外は計画に基づいて研究を遂行した。概ね順調な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
スマイルケア食の各段階に定められた介護食ならびに常食について、一口量を試験食品とし、2014年度、挑戦的萌芽研究、26670899、「食塊の口腔粘膜に対する潤滑性に基づく食品の被嚥下特性評価法の開発」により開発し、本研究にも用いた食塊潤滑性の評価法と、本研究の初年度で開発した食塊易変形性の評価方法を用い、これら試験食品の粘膜に対する潤滑性と易変形性を評価する。また、若年健常成人に試験食を規定回数(5、10、15、20回)咀嚼後に吐出させたものについて、同様に潤滑性と易変形性を評価し、各種食品の咀嚼に伴う潤滑性や易変形性の変化の速やかさを検討する。 一方、老健施設入所高齢者のうち、認知症の疑いの低い者10名(改訂長谷川式簡易知能評価スケールにて得点21点以上)に一口量の試験食品を摂取させ、摂取開始から嚥下までの所要時間(秒)を測定するとともに、主観的な摂取難易度を、①たやすく食べられる、②さほど苦労なく食べられる、③食べられるが食べづらい、④食べられない、⑤嫌いで食べないの5段階で評価させる。各食品3回の試行を行い、嫌いで食べない食品以外について、①に4点、②に3点、③に2点、④に1点を与え、平均得点をその食品の摂取難易度の評価指標とする。 以上より、試験食品の潤滑性、易変形性、ならびに咀嚼に伴うそれらの変化の速やかさと、主観的な食品の摂取難易度との関連を明らかにし、これら評価指標を食品の摂取難易度の評価の応用することの是非を検討する。
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Causes of Carryover |
実施計画に従い、研究を実施したが、装置の改変に係る想定外の出費が生じたほか、購入予定であった消耗品の購入が不要になるなど出費の減額があり、年度末時点で1万円強の残金を生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分に合わせて執行する予定である。
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