2016 Fiscal Year Research-status Report
周産期医療に積極的付加価値をつけるための周産期看護の分析と経営学的検証
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15K15853
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齋藤 いずみ 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10195977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 貴巳 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80316017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 助産学 / 経営学的 / 周産期 / 医療費 |
Outline of Annual Research Achievements |
厚生労働省(1996年)は、「周産期医療対策事業実施要綱」を打ち出し、総合周産期母子医療センターと、地域周産期母子センターが運用されている。周産期医療は、主に産科部門と小児科部門からなり、母児の生命を守るために24時間連続した医療供給体制が必要であり周産期医療の最後の砦というべき、必要不可欠な医療施設である。周産期医療の崩壊などと叫ばれて久しいにもかかわらず、詳細な経営的分析は現在までほとんど実施されておらず、その経営実態は未知数と言わざるを得ない状態である。本研究では特に、産科で扱う正常な分娩は疾病ではないという理由から、社会保険診療報酬として扱われず、出産のために5,6日入院し、病院施設および医師や看護師の人的資源を投入しても、分娩時の入院費用は全国的にも50万円前後で推移し、構造的に収益が上げにくい産科領域に着目する。また、産科医師や助産師は、分娩による現金収入を得て、病院経営に大きく貢献している診療科であるという自負を持っており、今後病院の中の診療科別に医療経営分析を試みた場合は、本人たちの自負とは一致しない可能性がある。 1 周産期母子医療センターの院長・看護部長・事務長・産科部長・小児科部長・助産師長または看護師長に、センターの医療・看護成果および課題、特に経営面についての課題をインタビュー調査し概要を明らかにする。2 代表的な総合および地域周産期母子センターの経営収支を実証データにより明らかにする。3 極低出生体重児の予後、在宅医療への移行推進率、各種治療成績、患者満足度、母乳育児実施率などの医療・看護の成果と経営収支との関連を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年は、経営学分野の研究者である松尾と経営学分他における文献を基に、研究の最終的な研究計画の枠組みを構成するために代表的周産期医療施設の一つであるA病院にて理事および看護部長から病院の経営に関する概要についてインタビュー調査を実施した。A病院の、組織風土などの看護業務の詳細を、実際の事例から聞き取りを実施した。A病院には現在旧二つの病院からなる人事交流が先行して実践している病棟と、まだ全く人事交流がない病棟があること、また28年度に統合を控えており現在は調査時期として困難であることが明らかになった。平成28年夏に二つの病院が統合しその総合が落ち着いた翌年に調査が可能である旨が明らかになった。 平成29年度にA病院の看護職に対し調査するための高校について事前準備を実施した。病院の発展的統合過程について調査の手法を考慮した。経営学の基本的理論や蓄積を生かし、それを病院や看護の職の分析手法に応用し、新しい経営学の発展に寄与すること。一方経営学の分野から、医療や看護の分析を通じ病院や看護の発展に貢献できること。両方の側面が必要とされる研究アウトラインについて会議を実施した。今まで論じられてこなかった、周産期部門の医療収益に関する分析を実施し、周産期部門は採算部門か不採算部門かを明らかにしたうえで、現在実施している周産期看護の成果により、たとえば極低出生体重児の予後と在宅医療への移行率、退院後の母乳育児実施率と経営学的評価を行い、医療収入の増加に貢献可能な新たなシステムを構築することなどを討論した。
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Strategy for Future Research Activity |
現状分析をふまえ、どんな問題や解決したいシーズがあるのか。医療診療データや、経営指標データの取り扱いは可能か。二つの旧組織からなるA病院の看護職および全職種が参加する経営に関する認識の調査について実施する。看護部長・助産師長・看護師長に、看護成果および課題、特に経営面について課題を半構造的インタビュー調査し概要を把握する。プロフェッショナルに関する質問紙等を参考に質問紙を作成し、地域母子医療センターの経営に関するどのような考えを持っているのかを明らかにする。その際に、以下の文献からの質問紙表を作成する。チーム内省(Somech, 2006), チーム学習志向(Bunderson & Sutcliffe, 2003)心理的安心感Edmondson. (1999) Exploration(Mom et al. 2007) MCS診断的使用Henri (2006) Boundaries(Widener, 2007)等。
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Causes of Carryover |
平成28年夏に二つの病院が統合し一病院となり出発するため、病院の総合が落ち着くまで調査の実施は困難であるとA病院から回答があった。そのためA病院で29年度に実施するために生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にA病院にて質問紙調査及びインタビュー調査の実施、加えて経営に関する実データから分析を実施する。
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