2017 Fiscal Year Research-status Report
小児がん経験者の心理的成長メカニズムからみた医療PTSD予防介入モデルの構築
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15K15857
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
益子 直紀 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (50512498)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小児がん経験者 / ナラティブ / 心理的成長 / 医療PTSD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小児がん経験者の語りを通して,Posttraumatic growth(以下PTG)が生起するメカニズムを明らかにし,小児がん体験によるPTSDに対する予防介入モデルを構築することである。 当該年度は,研究協力者の発病年齢や治療状況,闘病以降の人的・物理的環境の相違などに着眼しながら,これまでに分析した典型例を参考に,類似例・逸脱例の追加分析を継続してきた。 また,当該年度までに,長期的に繰り返されるストレスの契機や,PTGが生起するまでの情緒(もがき)の実態が見出されつつある。PTGI-J総得点の結果を参考にすると,PTG高群に含まれる小児がん経験者の語りには,主観的に区切りをつけている部分や「前の自分」「後の自分」を語る部分が存在していることが明らかになった。この部分に着眼して,それぞれの局面における生活史上の出来事との因果関係を詳細に分析することで,もがき以降の心理的成長メカニズムの要素として何が生起しているのか,長軸的な時間の中でPTGがどのように生起していくのかを示せるものと考えられた。 さらに,これまでに得られた看護への示唆として,支援のタイミングのほか,闘病中のサポートに対する小児がん経験者自身の主観的評価を高めていくケア,PTG高群が体験していた生活史上の出来事にまつわるリソースの強化,もがきの渦中で小児がん経験者がとる「防衛の強化」を支持した関わり方などがある。PTG生起の全体的なプロセスを見通しながら,得られた知見を統合していく段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は研究参加者を得ることが極めて困難とされる,成人期の小児がん経験者を対象としており,典型例・類似例・逸脱例などのデータを得るまでに時間がかかったことが研究の進行に影響した。また,研究協力者が語る心理面を浮き彫りにしていく質的分析は,慎重に行う必要があることに加え,補助事業期間中に通常業務における欠員が継続したことによって,教育活動に多忙を極め,平成29年度中に分析結果の統合には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
PTG生起の全体的なプロセスを見通しながら,これまでに得られた知見を統合していく。また,途中経過において新たな知見が得られているため,学会発表と論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
研究協力者の確保に努力してきたが,通常業務が多忙となり,インタビュー調査の日程調整がすすまず計画通りに研究費の執行ができなかった。研究協力に承諾が得られている残り4名のデータ収集を早期に実施し,分析と専門家会議,研究成果の発表に使用する計画である。
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