2017 Fiscal Year Annual Research Report
Ethnographic study examining networking among nursing professionals for nuclear disaster preparedness in Japan
Project/Area Number |
15K15908
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 純子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50295391)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護職間ネットワーク / 原子力災害リスク / エスノグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】原子力災害のリスクが高い日本において、原子力発電所(原発)の立地区域ごとに『備えの看護職間ネットワーク』を構築することの意義を鑑み、本研究では、文化を記述するエスノグラフィーの手法を用い、経済産業的な構造や行政組織などが影響し合うと考えられる原発立地区域の文化を記述し、ネットワーク構築の阻害要因と促進要因を明らかにすることを目的とした。【研究全体の概要】当初2年間の計画であったが、キーパーソンの異動、原発再稼働の是非に関する対立抗争の活発化などの影響を受け、1年間延長した。また、地域と個人が特定されるリスクを避けるため、フィールドを5区域の研究協力者25名に拡大し、平成29年4月にヒアリングを完了し、分析を進めた。【最終年度の研究活動】分析結果をもとに、研究協力者のうち、原発立地区域を含む市町村の保健師13名に焦点化した分析を行った。分析の問いを「原発立地エリアの保健師の心のうちとは」と設定し、テーマ、ドメイン、カテゴリを研究者間で抽出し検討を重ねた。その結果、当初想定していたネットワーク構築における阻害と促進の要因という対立構造ではなく、市町村の保健師は、専門職としての気づきや使命感を秘めつつも、原発とともにある役場文化・組織構造の中で共存しようとする、重なり合う2層の構造が抽出された。また、異なる属性を有する市町村の保健師間で、リスクや使命感の意識レベルに差異はあるものの、この基本的な2層構造は共通していた。このことから、全国の原発立地区域に適用できる『備えの看護職間ネットワーク』構築を促進するための活動原理として示すことができると確認した。保健師が専門職として住民をまもるための気づきを有することを前提とし、原発立地区域であるからこそ潜在的にならざるを得ない原子力災害リスク意識を顕在化することにより、ネットワーク構築を促すことができる可能性が示唆された。
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