2015 Fiscal Year Research-status Report
自覚症状の言えない知的障害者の健康危険サインキャッチへの挑戦
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15K15917
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
金 壽子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (60279776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
洪 英在 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40538873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 知的障害 / 体調不良 / 異常早期発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、自覚症状の言えない地域に居住している知的障害者に対して普段どのように異常をキャッチしているのか、また、入院を要するような体調不良を起こした場合、家族や保護者がどのようにその変調をキャッチしているのかを明らかにすることを目的として、大都市にあるZ地域の知的障害者のための作業所の利用者の家族を対象に面接調査を行った。Z地域には知的障害者のための作業所2施設の利用者110人の家族・保護者に対して研究協力依頼を行った。そのうち研究同意が得られた7人で、知的障害者本人の年齢は20~50歳代の男性5人女性2人で、知的障害の程度は軽度から重度であった。 知的障害本人の体調の悪さは、顔色や顔の表情、食欲、だるそうな様子や沈黙から、保護者は普段と違う状況を察知していた。ただし、その変化は長年連れ添っているから分かることで具体的な言葉で表現することは困難であった。 視覚的に確認可能な症状(咳、鼻水、風邪、熱、頻回のトイレ訪室、排泄物(下痢)、嘔吐、)については気付くことはできても、腹痛など体内で起こっている変化で視覚的に確認できないことサインについては家族であってもキャッチ困難であった。また、体調不良があることで、“周囲で何かが起きたサイン”として理解している保護者もいた。 面接を行った保護者は知的障害本人の健康管理のために食事と運動、就労先への適応が進むための関わりなど積極的に行動していた。医療者への要望としては、医療機関に知的障害者が関わる際に焦らせず優しく接してほしい、医師の尋ね方によっては自覚症状を上手く伝えられず実態とは違うように理解されるのではないかと危惧を持っている保護者もいた。その他、知的障害者が専用で利用できるスポーツ施設設置、児童相談所に保護者が関わる際に持病がないとしてもできるだけ早期にかかりつけ医を持つよう強く推奨してほしいとの要望が出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現状として、地域に生活している自覚症状を言えない知的障害者の人々の健康危険サインを保護者がどのようにキャッチしているのか概ねのことは示された。その一方で、入院を要するまでの対象者が稀少であること、研究返信内容から研究協力はしたいが現在その時間を作る余裕がないとの記載もあったこと、家族会の会長からも個人情報を取り扱うこといなるので協力は難しいのではないかとの意見が出されていることを受けて、家族を対象にした面接には限界があることが推測されたため、計画を修正し、更に対象を広げて、知的障害者の作業所に勤務する熟練の職員や指導員、作業所施設に勤務する医療者に対しても情報を収集する必要がある。特に、家族がキャッチできても言語化できない現状を可視化するために、知的障害者本人を継続的に観察して、普段の生活のなかから観察できる項目を家族・施設職員と共に検討する必要性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、当初の計画通り平成27年度の研究成果を 2016 IASSIDD World Congressで発表し、全世界の知的障害者に関する研究を行っている最先端研究では、どのように健康危険サインをキャッチしているのか意見交換を踏まえ、最新情報を収集する予定である。また、新たに追加して12th Nursing Congressでも研究成果を発表し、看護の視点としてのアプローチ方法について更に情報共有、意見交換を行う予定である。 加えて、知的障害者本人を継続的に観察して、普段の生活のなかから異常を早期にキャッチできる観察可能なサインについて、家族及び施設職員と共に観察試作案を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
保護者の面接を多数予定していたため旅費を確保したが、一地域での保護者への面接調査より、危険サインキャッチとしての観察項目の言語化が困難であることがわかり、対象を作業所等に勤務する医療者に対象を広げつつ、対象者の直接観察による可視化ツールの検討を行う予定である。人件費については3月に集中して情報整理として雇用したため、来年度に初期に執行予定となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は当初の予定通り豪州の2016IASSIDD World Congressで成果発表を行う予定である。加えて、カナダの12th Nursing Conferenceにおいても成果発表予定である。平成28年4月に前年度(27年度)の人件費を執行予定である。
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