2015 Fiscal Year Research-status Report
産業看護診断とエスノグラフィを用いた中小企業文化の解明による健康格差縮小への寄与
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15K15926
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Research Institution | Japan University of Health Sciences |
Principal Investigator |
池田 智子 日本保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (50341938)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 産業看護アセスメント・ツール / エスノグラフィック・インタビュー / 質的・帰納的分析 / 質問紙調査 / グループワーク / 中小規模事業場 / 職場文化 / 健康関連行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中小企業労働者が働いている現場において職場文化を観察し、そこから、健康に影響を与えている要因を丁寧に探り出し、健康格差縮小への寄与を目指すものである。 初年度は当初、先行研究レビューと、既に実施したデータの分析・整理を主に計画していたが、対象事業場2社の協力が得られたため、2年目から行う予定であった実践研究を、対象者の都合に合わせて初年度(27年度)から着手することに変更した。従業員120名(直接雇用90名+派遣30名)のA製造業事業場および、従業員15名のB金融業事業場においてそれぞれ、産業看護アセスメント・ツール(河野他, 2014)を用いた職場診断および従業員へのエスノグラフィック・インタビューを実施した。連携研究者のピア・スーパーバイズを受けながら、データを質的・帰納的に分析し、中小企業の職場文化と健康関連行動の特徴を浮き彫りにした。また従業員全員に質問紙調査を実施し、前者と合わせて分析した。さらにA事業場は8名、B事業場は全社員の15名でそれぞれグループワークを実施し、職場の良いところと改善の必要を感じるところについて意見を出し合ってもらった。 筆者らの過去の中小企業研究の知見と一致して、各事業場の職場文化は大きく異なり、多様性の幅広さを示したが、2事業場に共通する特徴もいくつか見られた。少人数で固定的な人員で長年仕事をしていく上で、人間関係にたいへん気を遣い、不調や不快をがまんしてしまいがちな点は、2事業場に共通するひとつの特徴と考えられた。2年目はもう1事業場の協力が得られたので、さらに比較検討を行っていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象事業場の協力が得られたため、2年目に予定していた実践研究を初年度から実施でき、さらに2年目にも新たな協力事業場を確保できた。 一方で、初年度に実施する予定であった先行研究レビューや既存のデータの分析をする時間がほとんど取れず、理論分析やまとめなどの机上作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
従業員120名のA事業場とほぼ同規模の事業場の協力が新たに得られ、2年目から実践研究を開始する。初年度の2事業場との比較分析により洞察を深められるので、貴重な対象であると考えている。また初年度の2事業場にも引き続き研究を継続する。1事業場当たりの実践はほぼ1か月に3日程度のため、3社を合計すると1か月に9日間を要し、研究者2名分のエフォート率では不足する可能性がある。研究協力者を増やすか、実践回数を減らす工夫を考えなければならない。 上記にも関連し、データ分析やまとめに要する時間の確保も課題である。効率よく作業を十分に行える工夫を考えなければならない。
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Causes of Carryover |
協力事業場の確保ができ、対象者に合わせて初年度より実践研究を開始することになり、初年度はほぼそのために時間を費やした。 よって当初予定していた初年度の国際学会発表や既存データの整理が出来なくなり、そのために計上していた旅費や解析ソフト購入の予算を使用しなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度と次年度にかけて、データ分析のための解析ソフトを購入し、学会発表や論文執筆のための旅費や英文校閲費にも使用していく。
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