2015 Fiscal Year Research-status Report
フラッシュメモリのための制約符号,およびその性能評価
Project/Area Number |
15K15936
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
眞田 亜紀子 電気通信大学, その他の研究科, 助教 (20631138)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フラッシュメモリ / セル間干渉 / 制約符号 / グラフ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
不揮発性・高密度記録媒体として近年注目されているフラッシュメモリは(例:USB,SSDなど),保存したいメッセージをあるデータ列d=d_1d_2...d_Nに対応させ,i番目のセルに電荷レベルがd_iになるまで電荷を注入することでデータ列を書き込む.また,各セルの電荷レベルを量子化してデータ列を復元し,データ列に対応したメッセージを返すことでメッセージ読み出しを行う.
フラッシュメモリでは,セルの電荷が隣接するセルの電荷に引きずられて,所定の電荷量以上と判断されるセル間干渉(Inter Cell Interference: 以下ICI)が典型的な誤りとして挙げられる.デバイスの小型化につれて,ICIを防ぐようにデータ列を保存することがより重要となる(データ列制約).一方,コストと寿命の観点から,セルに蓄えられた電荷は下げずにデータ列を保存していくことが好ましい(上書き制約).これらの問題を解決すべく,ICIに影響を受けやすいデータ列を禁止語(保存するデータ列の中に現れてはいけない系列)とする制約符号の観点から研究に取り組んでいる.
平成27年度は,制約符号のグラフ表現(経路に沿ってラベルを読んでいくことで生成される記号系列は,制約符号の禁止語を含まないグラフ)を準備し,グラフの頂点をメッセージと対応させ,メッセージ書き換えをメッセージに対応する頂点間の経路で表す符号化を提案した.提案手法を用いて保存されたデータ列は,ICIに弱いデータ列は含まないためICI耐性がある.また,一回の書き換えで使用するセル数は経路長と等しいため,経路長を短くすることで書き換え可能回数を増やすことができる.そこで,与えられた制約符号のグラフ表現の中で直径(2頂点間の最短経路の最大長)が最小となるグラフを求めた.また,そのグラフをもとに,メッセージ数が与えられたときのグラフ表現の直径の見積もりも行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は.制約符号を表現するラベル付き有向グラフもとにデータ列制約と上書き制約を満たす符号化を提案し,国際・国内学会で発表した.学会発表後にいただいたフィードバックや他の研究者との議論を通して,提案手法の有効性を主張するために必要な比較や,これからの方向性について新たな知見を得られたことは非常に有益であった.
また,制約符号に関する入門講義を担当できたのは大きな収穫であった.基礎的部分を中心に行った講義だったが,皆興味深く聴講していただき,制約符号をフラッシュメモリへの応用する研究の有効性を発信することにも尽力できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に提案した方法では,一度使用したセルは再利用できないという問題がある.よって,一度のデータ書き込みで使用できる電荷量を制限するなどして,書き込み回数を増やすことを当面の目標とする.
また,上書き制約とデータ列制約を直接的に考えるには,二次元での理論的解析が必要である.これまで二次元(一般的に多次元)での解析は非常に難しく解明されていない問題が多い.一方で,多次元で新たな理論的結果が得られれば,フラッシュメモリにおける解析にも応用できる.二次元での解析の第一歩として,これまで難しいとされてきたグラフ表現の提案にも注力し,得られた表現をもとに未知の部分の開拓も目指していきたい.
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Causes of Carryover |
前年度は,予定よりも学会参加回数が増えたため100,000円の前倒し請求を行った.それに伴い,10,000円強の次年度使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように,前倒し請求を行ったためにわずかに未使用額が生じたが,ほぼ計画通りに研究費を使用している.次年度は,未使用額を学会参加費などにあてて,研究成果を発表するために有意義に使用する.
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Research Products
(3 results)