2016 Fiscal Year Research-status Report
単体法は多項式アルゴリズムであるか? ―未解決問題解決への布石―
Project/Area Number |
15K15941
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北原 知就 東京工業大学, 工学院, 助教 (10551260)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 単体法 / 線形計画問題 / 多項式アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(a) Chubanovのアルゴリズムの拡張、(b) 単体法のピボット規則の調査と検討、(c) LP-Newton法の研究、(d)集合被覆問題を一般化した問題に対する近似アルゴリズムの研究を行った。それぞれの詳細は次の通りである。 (a) Chubanovのアルゴリズムの拡張:Chubanovのアルゴリズムは、線形計画問題に対する新しい多項式オーダーの解法であり,近年活発に研究が行われている。過去には内点法と単体法を組み合わせたアルゴリズムが提案されたことがあるので、研究を進めるうえで、Chubanovのアルゴリズムについて深く理解することは重要であると考えられる。本年度はまずChubanovのアルゴリズムを線形計画問題を含むより広いクラスの問題である二次錐計画問題に拡張した。さらに研究を進め、さらに広いクラスの問題である対称錐計画問題にまで拡張をすることができた。これらの結果を2本の研究論文にまとめ、専門誌に投稿した。 (b) 単体法のピボット規則の調査と整理:研究代表者がこれまでに単体法の研究で得ている結果の多くは、最も基本的なピボット規則である、Dantzigの規則に対してのものである。それ以外の最大改善規則、Blandの規則、最急降下辺規則といったその他の規則について検討することで、新たな結果が得られる可能性がある。本年度はDantzigの規則以外のピボット規則について調査し、検討した。 (c) LP-Newton法の研究:前年度に提案した、LP-Newton法に二分法を組み込んだアルゴリズムについて、さらに検討を重ね、精緻化した。結果を研究論文にまとめ、専門誌に投稿した。 (d) 集合被覆問題は様々な応用を持つ重要な問題である。本年度は集合被覆問題を一般化した問題に対する近似アルゴリズムの研究を行い、数理計画問題に対する新しい視点を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は線形計画問題に対する新しい解法であるChubanovのアルゴリズムについて詳細に検討し、二次錐計画問題、対称錐計画問題に拡張し、2本の論文にまとめることができた。過去には内点法と単体法を組み合わせたアルゴリズムが提案されたこともあるので、今後の研究を進めていくうえで、Chubanovのアルゴリズムに対する理解を深められたことは重要である。また、単体法のDantzigの規則以外のピボット規則について整理したことで、問題意識が生まれ、このことは次年度の研究につながる。さらに、LP-Newton法についての研究を重ねたことで、線形計画問題に対する理解を深めることができた。 以上の点を考慮すると、本研究課題は順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に、(a) 単体法に対するDantzigの規則以外のピボット規則の研究、(b)Chuvanovのアルゴリズムと単体法を組み合わせたアルゴリズムの提案、(c) 研究成果の学会等による発表を行いたいと考えている。それぞれの詳細は以下のとおりである。 (a) 単体法に対するDantzigの規則以外のピボット規則の研究:サイクルが発生しないピボット規則であるBlandの規則は必ず有限回で終了することが知られているが、反復回数の明示的な上界は知られていないので、これを得ることを目標としたい。また、最急降下辺規則は線形計画ソルバーに利用されているが、その理論的な性質はあまり知られていないので、これについて理論的な結果を得ることを目指す。 (b) Chubanovのアルゴリズムは、正確には線形実行可能性問題についてのものであり、与えられた線形計画問題を解くにはこれを線形実行可能性問題に変換しなくてはならない。そこで、Chubanovのアルゴリズムを線形計画問題を直接扱えるように改良したい。その上で、得られたアルゴリズムと単体法を組み合わせられないかを検討する。 (c) 本年度は研究最終年度であるので、これまでに得られた結果を学会等で発表し、他の研究者からフィードバックをもらい、さらなる研究の発展を目指す。 なお、上記に挙げた以外にも、最適化分野における最新の研究成果に常に注意を払い、本研究課題の進展に生かすことを検討する。
|
Causes of Carryover |
研究期間中に子どもが生まれたため、学会への参加を取りやめるなど、当初の計画の変更が必要となったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会等への参加、および、必要文献等の購入を行う。
|
Research Products
(5 results)