2016 Fiscal Year Research-status Report
がん分子標的薬の特性を考慮したベイズ流用量探索法の研究開発
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15K15948
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平川 晃弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90609330)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ベイズ統計学 / 用量探索法 / 臨床試験デザイン / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子標的薬は,毒性と有効性が比例関係にあるとは限らないため,必ずしもMTDが推奨用量になるわけではない.分子標的薬の場合は,ある用量以降は有効性がプラトーになる等,有効性の非単調性を考慮して決定した用量(生物学的最適用量,Biological Optimal Dose; BOD)を推奨用量にする方が合理的である.したがって,分子標的薬の用量探索に,細胞障害薬用に開発された方法を利用することは妥当ではなく,BOD探索法を新たに開発する必要があった. 本研究では,change point modelと呼ばれる,ある変化点の前後で異なるモデルを仮定する新たなベイズ流用量探索法を開発した(Sato, Hirakawa, & Hamada, 2016, Statistics in Medicine).当該方法では,変化点となる用量を与えたもので,各モデルパラメータをベイズ推定値し,その尤度が最大となる変化点用量を採用する.当該方法は,既存法よりもBOD選択確率が高いことがシミュレーション実験で確認され,分子標的薬のための用量探索法のひとつとして有用であることが示された. また,当該方法をさらに拡張し,様々な毒性および有効性の用量-反応関係をモデル化してBODを同定する方法も開発した(Sato & Hirakawa, under review).さらに,2つの薬剤を併用する2剤併用療法のためのベイズ流第I/II相デザインに関する研究も実施した(Shimamura, Hirakawa, Hamada, & Matsui, under review).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
change point modelに基づく用量探索法の研究開発だけでなく,当該方法を拡張した方法やベイズ流第I/II相デザインについても研究を実施することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
多くのBOD探索法が開発されている一方で,米国で承認された分子標的薬33品目のうち,8品目(24%)において,その推奨用量を誤特定している可能性があったとの報告もある.研究代表者は,推奨用量の誤特定の原因を調査するために, 2015年から国立がん研究センターおよび米国がん研究所の研究者と,分子標的薬15品目の投与量・毒性・有効性の関係性を評価してきた.その結果,第2サイクル以降に発現する遅発性の毒性割合は約20-30%であり,その多くが休薬・減量の原因となっていた.そして,休薬・減量に至った患者は,結果的に病態が悪化していることが明らかになった(Hirakawa et al., under review).これらの結果を踏まえて,今後は,長期毒性を考慮できる用量探索法を開発していく予定である.
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Causes of Carryover |
計画時の目的は達成したものの、以下の研究が継続中であるため、延長を申請した。 1.新たな着想により、より精度の高い方法を開発でき、その成果を論文投稿中である。2.米国がん研究所との共同研究を始めることができ、その成果をまとめている段階であるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿費用、国際学会発表のための旅費、およびそれに伴う通信費、消耗品に使用する予定である。
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