2015 Fiscal Year Research-status Report
複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式に対する高精度・高効率アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
15K15996
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多田野 寛人 筑波大学, システム情報系, 助教 (50507845)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 連立一次方程式 / 複数シフト・複数右辺ベクトル / シフトブロッククリロフ部分空間法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,複数右辺ベクトル,及び係数行列にシフトパラメータをもつ連立一次方程式(以下,シフトブロック連立一次方程式と呼ぶ)に対する高精度,かつ高効率数値計算アルゴリズムの開発を目的としている.同問題は素粒子物理学をはじめとした応用分野で現れ,高速求解手法が必要とされている. 1本の右辺ベクトル,及びシフトパラメータをもつ連立一次方程式に対する数値解法として,シフトクリロフ部分空間法がある.同法は1本の連立一次方程式を解く過程で,他のシフトパラメータをもつ連立一次方程式の近似解更新を少ない計算量で行うことができる.一方,複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式に対する数値解法として,ブロッククリロフ部分空間法がある.同法を用いることにより,各右辺ベクトルに対してクリロフ部分空間法を適用した場合と比較して,少ない反復回数で近似解を得られることがある. 本研究では,シフトクリロフ部分空間法とブロッククリロフ部分空間法を組み合わせた,シフトブロッククリロフ部分空間法を構築した.特に,研究代表者らがこれまで開発してきたブロッククリロフ部分空間法であるBlock BiCGGR法,及びBlock BiCGSTAB(l)法を基盤として,シフトブロック連立一次方程式に適用するための拡張を行った.この拡張により,シフトブロック連立一次方程式をより少ない反復回数・計算量で解くことが可能となった.その一方で,最終的に得られる近似解の精度が劣化するという問題点が発見された. 近似解更新部分で現れる計算の大部分は,縦長行列と小行列の積であるため,この部分に着眼して方法の改良を行った.具体的には,縦長行列・小行列の積の計算回数が減少するようにアルゴリズムを修正し,近似解の精度向上を図った.その結果,単純に拡張した手法と比較して,改良法は最良の場合で5~6桁程度高精度の近似解生成が可能となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究を通して,シフトブロッククリロフ部分空間法の構築,及びその近似解精度改善ができていることから,「おおむね順調に進展している」と評価する.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,シフトブロッククリロフ部分空間法の更なる精度改善について研究を行っていく.問題によっては,現在開発している手法でも十分な精度の近似解が得られないことがある.そのため,近似解の精度劣化の原因についてより詳細な解析を行い,更なる精度改善の糸口を探る.また,様々な分野で現れる問題に対して開発手法を適用し,有効性の検証,及び解法の改良を行っていく.
|
Causes of Carryover |
旅費については当初予定していた額よりも余分に必要となったが,物品費,その他の費用については,既存設備で賄えるようになったなど状況が変化したため,若干の次年度使用額が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については,物品費,または旅費として計上することとし,適切に執行する.
|