2016 Fiscal Year Research-status Report
SRシステムによる時間錯誤を用いた時間認知知覚メカニズムに関する実験研究
Project/Area Number |
15K16014
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
脇坂 崇平 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (40513445)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デジャブ / 時間錯誤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験の目的は、代替現実システム(ヘッドマウントディスプレイとパノラマビデオカメラを組み合わせた認知実験装置)を用いて強い時間錯誤の生成を実現し、その生成過程と内容を調べることにより時間知覚メカニズムの解明を試みるものである。 初年度の予備的研究では、被験者によっては強い時間錯誤が実現されたが、発生タイミングは十分にコントロールできてはおらず、故に統計分析が可能な実験課題を構築するにはいたらなかった。被験者間のばらつきを抑えるため、短時間の体験内で高い確率で時間錯誤が生成される状況を新たに作ることとした。 具体的には、インタラクション性の強いライブ体験と、その体験のリプレイ(過去映像)体験を、知覚的には全く区別が不可能なように自在に混ぜ合わせる装置を開発した。従来の装置でもある程度区別は難しかったが、今回はライブ・リプレイの体験をまったく同一のパノラマカメラから取得することとした。また予めリプレイ用の映像は撮影せず、体験開始後のライブ映像を記録して、それを後半の体験に時間的空間的に混ぜ合わせることにより、映像上はまったく弁別不可能な状況をした。これにともない体験シナリオも変更した。 本実験として、心理実験および心理物理実験を行った(被験者数:12)。実験内のシナリオでは、被験者は二人の演者とコミュニケーションを取る。その体験シーンは、数十秒から数分後にふたたびリプレイされる。ただし全周囲 結果、期待したとおり、半数以上がデジャブないしジャメヴ(デジャブの逆の感覚)、すなわち時間錯誤の発生を報告した。また、もっとも強いデジャヴの指標としていた「未来予知の感覚」も2割程度の被験者が報告した。現在は上述実験のデータ解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画にてもっとも重要な項目であった、強い時間錯誤が達成された。実験室内でこのような錯誤を意図して生成する手段自体に新規性があるが、今後の解析によって、時間錯誤と他の認知状態との相関構造が明らかになることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本実験を継続する予定だが、所属研究機関を移ったため、新たに研究倫理審査を通す必要がある。その際、時間錯誤を高確率で生成することが可能となったことを受け、脳波計測を導入し客観的指標も解析に組み合わせることを検討する。 また現在、視線計測の組み込みを実装しているところであり、それが順調に進めば、眼球運動から推定される注意対象の情報も、錯誤の構造解析に導入する予定である。 今後新たに20人程度の被験者のデータを取得・解析したのち、論文・学会発表へと移行する。
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Causes of Carryover |
当該年度の支出として、実験補助者への謝金といくつかの学会発表と論文投稿に関する費用を想定していたが、装置開発及び実験が完了しなかったために発表等が次年度に延びたこと、および謝金が所属機関の運営費により支払われたために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
あらたに視線計測装置の導入を現在試みており、最終的には次年度使用額と同等程度の支出が伴う見込みである。
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