2015 Fiscal Year Research-status Report
演奏者の音楽性を捉える統計的音楽モデルと演奏・伴奏の自動化
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15K16054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 栄太 京都大学, 情報学研究科, 研究員 (10707574)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽情報処理 / 統計的音楽モデル / 統計的演奏モデル / 自動伴奏 / 自動採譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コンピュータが音楽的に自動演奏したり、人間と一緒に合奏する技術などを目指して、統計的音楽モデルに基づく手法の開発を行うことを目的としている。特に、特定の楽曲や特定の演奏者の様式に合わせたモデル化により、演奏者の音楽性を捉えた自動採譜・自動演奏・自動合奏などの技術の開発に取り組んでいる。 平成27年度は、主に本研究の基盤となる音楽性を捉える統計モデルの構築を行った。まず、演奏誤りや弾き直し、装飾音を含む演奏の生成を記述するモデルを構成した。従来の隠れマルコフモデルに基づくモデル化では、トリルの音符数や音長の記述が荒い問題があった。この問題を解決するために、自己回帰隠れセミマルコフモデルを用いたモデル化を行い、演奏と楽譜のアラインメントの精度が向上することを確認した。この成果は国際会議及び国内研究会で発表した。また、異なる音楽様式を捉えるための統計モデルの構築も行った。一つは、多声音楽の音符列から得られる音程のマルコフモデルにより音楽様式の分類を行うもので、音楽理論から予想される特徴量とモデルパラメータの関係性を明らかにし、また高い精度で異なる時代の作曲家の分類ができることを確認した(国際会議で発表済)。もう一つの方向性として、音楽で用いられる音符列のパターンは、楽曲により大きく異なる点に着目して、ベイジアン半教師あり学習の枠組みを用いることで、各楽曲に適した音楽言語モデルを自動習得できるモデルの構成を行った。これにより自動採譜の精度が向上することも確認した。この他にも、音響信号に対する自動伴奏のためのモデル化やピアノ運指モデルに基づく自動編曲手法などに関する研究成果を発表している。 以上に合わせて、平成28年度に行う予定の自動演奏・自動合奏システムの構築に必要となる演奏データの収集及びデータ整備に必要となる楽譜と演奏のアラインメントツールの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に演奏認識を前提として詳細な演奏モデルの構成と音楽様式を捉えた音楽言語モデルの構成において計画以上の進展があった。この結果、当初目標としていた3件よりも多い4件の国際会議発表を行うことができた。また演奏データベースの整備に向けた準備も予定通り進んでいる。一方で、演奏表情のモデル化に関しては少し遅れているが、現在取り組んでいる。新たな研究協力者の追加もあり、今後の進展が期待できる。全体としては、概ね予定通りであり、引き続き研究期間全体として予定通りの成果が出せるように努めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、多様な演奏様式に適応できる自動演奏・合奏・採譜技術の開発を主に行う。まず特定奏者の演奏データから奏者に適応したモデルを効率的に得るための、コンテキスト依存モデルの演奏者への適応手法を開発する。またこの適応アルゴリズムの実時間化に取り組む。これらを基に、自動演奏・合奏システムを構築する。 以上の研究成果の発表を行うとともに、システムや技術紹介のWeb発信に向けた準備も行う。
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Research Products
(9 results)