2017 Fiscal Year Research-status Report
複雑ネットワーク理論による感染症拡大解析と対策最適化
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15K16061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 直哉 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (00637449)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複雑ネットワーク / 感染症 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究成果の海外での発表を行なうとともに、実施計画で述べた、手法の一般化・拡張に関して、最大クラスタサイズの時間変化に関する性質を解析する手法を検討した。この手法は将来、本研究課題で提案した手法を、時間変化するネットワークである、長期間の移動データに利用する際において重要な役割を果たすと考えられる。この手法の適用が必要と考えられる状況として、コンピュータウィルスなどのように感染拡大の速さがネットワークの構造変化と同程度である場合も考えられる。 また、本研究では時間変化するネットワーク構造を時間平均で置き換える近似を行っているが、この近似の有効性を、いくつかの人工的なネットワークにおいて確認した。特に、複雑ネットワークの代表例のひとつであるスモールワールドネットワークにおいて、この近似が有効ではない場合があることを示した。この結果は、提案手法の適用範囲に注意が必要であることを示唆しているが、人の流動データでは、これまでの研究成果が示しているように、この近似は有効であると考えられる。 これまでの研究成果を、ネットワーク科学の国際会議「NetSci2018」のサテライトセッション「UrbanNet: Urban Systems and Network Science」にて発表した。感染症の数理モデルの研究者から本研究に対してコメントを得ることができた。また、スペインで平成30年9月に開催予定の国際会議「NOLTA2018」での発表申し込みを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度中は、本研究課題の研究成果を国際会議にて発表することはできた一方、論文発表については当初予定よりも遅延している。本研究課題の最終目的である感染症対策の最適化理論の構築、に関しては、研究開始当初に計画していた、少数自由度による感染最終規模方程式を用いて対策の効果を見積もる理論の概略、および、時間変化するネットワークへの拡張手法はほぼ完成したものの、学会発表等には至らなかった。以上の理由により、本年度は研究の進捗がやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究のとりまとめを行う。平成29年度に刊行できなかった論文の刊行に向けて、論文の再投稿などを行う予定であるとともに、国際会議などにて研究発表を行う。また、今年度得られた、手法の一般化・拡張に関する研究結果もとりまとめを行う。また、従前より継続している、公衆衛生学の研究者との議論は今後も継続していく。実際の感染症の実態に即した感染症モデルの拡張や、感染拡大の実データと理論結果の比較を行うための手法などを、議論に必要な理論的課題として想定している。
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Causes of Carryover |
本研究課題の成果に関する論文を投稿したが、採録には至らず、論文の修正に時間を要し、研究の完成が遅延した、研究成果の国際学会での発表を平成30年度に行うことを予定しており、平成29年度に出張を行うための旅費を次年度に使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)