2015 Fiscal Year Research-status Report
振動子ネットワーク:生命現象の理解と予測を目指したモデリングと理論枠組みの構築
Project/Area Number |
15K16062
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
郡 宏 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80435974)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 同期現象 / 概日リズム / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では体内時計や脳にみられる振動現象に関する理論的課題に取り組む。27年度は特に、脳から抹消までの階層的な体内時計ネットワークを構築し、時差ボケや睡眠障害などの特異なダイナミクスの理解を得て、新規実験の提案を行った。海外旅行時に経験する時差ボケの特異な性質にモチベーションがある。体内時計は視交叉上核(SCN)と呼ばれる神経細胞ネットワークが作り出す。個々の細胞は約24時間周期で遺伝子発現を繰り返し、振動子とみなせる。この系は、視神経からの入力によって環境の明暗サイクルの影響(周期外力)を受ける。時差は明暗サイクルの位相を瞬間的に大きく変化させることに対応し、その摂動からの緩和過程が時差ボケの原因を作る。前進させる時差(東向きの長距離移動に対応)では、緩和時間が非常に長く、また、数日間にわたって細胞集団の位相がバラバラ(脱同期状態)になことがマウスやラットの実験観察から知られている。解決すべき問題は、前進と後退の時差に対する非対称性のメカニズムと脱同期のメカニズムである。これらを明らかにするため、2つのアプローチを行った。前者には、外力をうける振動子モデルの標準化を近恒等変換を利用した高次の摂動論を構築することにより、周期外力のもとでは前進の時差にたいして緩和が遅くなることが一般的であることを示すことに成功した。また、後者については、視交叉上核の階層的構造を出来る限りシンプルに取り入れたモデルを構築し、脱同期の説明に成功した。このモデルによる予測を共同研究者が実験検証を行った。これらの結果は現在投稿準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時差ボケだけでなく、シフトワーカーの体内時計の不調についても取り組むことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
十分な成果がでているので、論文執筆を加速させるべきである。
|
Causes of Carryover |
招待講演の1つが先方払いとなったため、海外旅費が節約された。また、購入予定であった計算機サーバーは、最近購入された共同利用の計算機の活用ができたため、27年度は購入を見送った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の加速ため、研究補助者の雇用や、新たな計算機サーバの購入に充てる予定である。
|