2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中嶋 浩平 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10740251)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レザバーコンピューティング / 機械学習 / リカレントニューラルネットワーク / ニューラルネットワーク / 非線形力学系 / 大自由度力学系 / カオス / ファラデー波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の主眼は、流体計算機の実装実験にあったが、あらゆる入力系列に対応できるように高速度カメラを導入したことに伴い、非常に大容量の画像データを処理する必要が出てきた。そこで、画像を取得する前に、計算に用いない領域のデータを削り、余分なデータの取得を避け、データ取得時には同時に各ピクセルの値を時系列表示できるようなシステムを導入し、非常に効率よく実験を行うことができるようになった。これはこの先、様々な物性をもとに実験を行っていく上で、必要不可欠なセットアップである。 次に、昨年度に実装したタイマー実験について、複数の追加実験を行い論文として投稿準備中である。ここでは、まず、タイマーとして埋め込める時間幅を評価する記憶容量を定義し、その指標をもとに、水の量と入力強度の依存性を系統的に調べた。次に、外的なノイズに対する耐性をノイズ強度を変えながら評価した。そもそもreservoir computingは脳の情報処理の様態にインスパイヤ―されて考案された手法であり、脳内のシグナルのような外的ノイズに常に埋もれた状況下でも情報処理能力が完全に消失するようなことはない。本実験系は脳内よりも本来的にノイズは少ないが、かなりのノイズを外的に仮想的に与えた際でも、頑健に情報処理が行えることを示した。また、ここまでのタイマー実験はパルスを扱ったが、ここでは新たに、ある指定したタイミングで複雑なパターンを出力するといったタスクも実装できることを示した。そして、入力の強度に合わせて、出力の時間幅を調節するという制御も実装するできることが示され、水面波には時間の情報を空間の情報としてエンコードできること、ならびにその限界を含め、系統的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流体計算機系のソフトウェアの調整に時間がかかっていたが、この先、実験を何度も行っていく上で、時間的にも効率よく行っていく必要があり、今回のシステムの導入は必要不可欠であったといえる。本研究のアイディアは、他の物理的な媒体を活用するphysical reservoir computingの系、例えば、シリコンなどのやわらかいマテリアルや量子多体系そしてニューロモーフィックチップにも拡張することができ、複数の共同研究を推進している段階にある。さらに、本年度は多くの招待講演を行う機会に恵まれ、社会的に当研究の成果・背後にあるモチベーションを精力的に発信することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で、流体計算機の系はほぼ整ったので、今後は計算機の実装を精力的に進めていく予定である。これまでタイマータスクの研究に集中していた理由は、加振機から送る入力系列の速度と水面波を計測するビデオカメラの速度の兼ね合いという、実験系の制約からくるものであったが、本年度のシステムの導入に伴い、その点が解消された。つまり、この先は、reservoir computingが射程に入れる、より一般的な実時間計算・非線形力学系のエミュレ―ションのタスクなどの実装が可能となったので、いよいよ流体の情報処理能力とその物理的な性質の間の関係の解析と定式化に進んでいく予定である。
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