2016 Fiscal Year Research-status Report
「語り」の蓄積からコミュニティの物語を出力する地域デジタルアーカイブの構築と運用
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15K16098
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
松本 早野香 大妻女子大学, 社会情報学部, 講師 (90575549)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域コミュニティ / 東日本大震災 / 臨時災害放送局 / デジタルアーカイブ / 宮城県亘理郡山元町 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域コミュニティに属する人の「語り」に着目し、これを蓄積し文脈に応じて出力、それによって「コミュニティの物語」を提供する新しいタイプの地域アーカイブを構築することにより、地域における情報技術の活用に新しいモデルを提案するとともに、地域コミュニティにおける「語り」の果たしうる役割を実証的に研究するものである。 対象となる地域は可住面積の6割が東日本大震災の津波被害をうけた宮城県亘理郡山元町である。この町には東日本大震災発生10日後から放送を開始し、当該年度終了日である3月31日まで放送を継続した臨時災害放送局「りんごラジオ」があった。りんごラジオのコンセプトは「いい町には声がある」「山元町100%」、すなわち町民が町民に向けて話すというものである。道を歩いている人にアポイントメントなしで話しかけるコーナーが長期にわたって続いているなど、出演者は公人にかぎらず、幼稚園児から高齢者まで、ほとんどあらゆる町民をふくむ。 地域に大きく貢献したりんごラジオであるが、放送記録についても地域におおいに貢献しうる。しかしながら、現在、臨時災害放送局の記録はそのような機能を有しておらず、デジタル化されていないものも含め、さまざまな記録が連結されず独立して存在している。そこで本研究では、人々の「語り」を重視してきたりんごラジオの放送記録を中心として関連情報を結び付けることができるアーカイブシステムを構築することをめざす。研究2年目である平成28年度には、放送記録のデジタル化と整理を進め、また、ラジオ局閉局にあたっての関係者の記録に対する思い等について聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放送記録は手書きのノートであったことから、許諾を得てデジタル化を進め、放送記録に掲載された人々の「語り」について整理した。具体的には、人々の出演する番組について記録をもとにまとめ、放送の概略と変遷を論文として執筆した。さらに、アーカイブ設計の参照とするため、放送局局長・スタッフ、関係者への聞き取り調査を実施した。加えて、本研究開始前の段階で開設・運用支援をおこなっていた臨時災害放送局のブログを保全した。このブログにはラジオ局スタッフにより投稿された多くの写真など、復興記録となりうるコンテンツが残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
臨時災害放送局「りんごラジオ」は閉局したが、放送記録ノートのデータはすでに取得しており、また、放送局長・局長代行にも研究協力者として随時連絡が取れる状態である。また、記録を活かす主体である地域の自治体、すなわち町役場の関係者にも放送記録ノートの電子化について報告した。今後は、第一に、電子化したデータをデジタルアーカイブとして実装する。また、ブログに掲載されたデータも活かすことを検討する。さらに、最終年度にわたって、地域でこれを活かす方法を提案するために地域住民の協力を得てアーカイブを試用する。
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Causes of Carryover |
データ整理を委託するより研究者本人がおこなったほうが効率的であった部分があった。また、年度終わりに掲載される論文掲載料の支払いが次年度(すなわち本年度)になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ある程度整理したデータの処理は委託可能であるため、データ整備関連の費用は主に次年度に支出する。また、論文掲載料などを支払う。
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