2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16111
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白木 厚司 千葉大学, 統合情報センター, 准教授 (10516462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 指向性ディスプレイ / ボリュームディスプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,見る方向によって異なる情報を表示できる,指向性の高い情報発信システムの実現を目的とし,研究を行っている.これを実現するための手法として,「ボリュームディスプレイ」の技術に我々の提案した「複数の2次元情報を同一立体に記録する手法」を適用する.ボリュームディスプレイの表示部分には「糸」を用い,その糸に対しプロジェクタで映像を投影することで,高指向性ボリュームディスプレイを実現した. 高指向性ボリュームディスプレイを実現するにあたり,糸の配置に以下の三つの制約を設けた.(1)正面および側面から観察する際に全ての糸が重ならないこと.(2)プロジェクタからの光線上に1本の糸だけが存在すること.(3)80cm四方の空間内に不規則に糸を配置すること.これらの制約は「解像度の向上」,「ノイズの低減」,「指向性の向上」につながるものである. 先行研究ではボリュームディスプレイを7×7本の糸で製作していたため,試行錯誤的に糸の配置を決定することができたが,本研究では20×20本の糸で製作することを想定しており,試行錯誤での糸の配置が困難であったため,コンピュータシミュレーションにより糸の座標を決定することとした.先述した制約を条件とし,コンピュータシミュレーションで糸の配置を決定したところ,実際に配置できた糸は347本であった. 作製したボリュームディスプレイに映像を投影したところ,正面および側面から異なる映像を得ることに成功し,また,斜めから観察したときには意味のある映像として認識できないことが確認でき,高指向性ディスプレイの作製に成功した.先行研究では7×7画素の単色の映像であったのに対し,本研究では20×20画素のカラー画像を得ることができており,表現できる映像の幅が広がった.本研究の成果は国際会議1件と国内発表2件で報告している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は,先行研究で作製した7×7画素のボリュームディスプレイよりも高解像度なボリュームディスプレイを作製し,指向性を持った映像を投影するというものであった.この計画を遂行するにあたり,まず,糸の配置座標を決定するシミュレータを作成した.シミュレータによる座標の決定は以下の制約に基づいている.(1)正面および側面から観察する際に全ての糸が重ならないこと.(2)プロジェクタからの光線上に1本の糸だけが存在すること.(3)80cm四方の空間内に不規則に糸を配置すること.(4)糸と糸の距離が2mm以下の場合,配置しないこと.(1)~(3)の制約は映像を投影するにあたり画質の向上につながる制約であるが,(4)の制約は糸の配置に磁石を用いているため,近すぎると物理的に配置できなくなってしまうということに対する制約である. 上記の制約に基づいてシミュレータを作成し,糸を配置する座標を求めた結果,配置できる糸の数は354本であった.さらに,投影距離の測定誤差など人的要因により配置できない糸があり,347本の糸を用いてボリュームディスプレイを作製した.その結果,20×20画素の映像を正面および側面のそれぞれに投影することができ,先行研究と比べ大幅な解像度の向上を実現した.さらに,先行研究では単色での映像であったのに対し,提案アルゴリズムを拡張することでカラー映像の投影にも成功した.このように平成27年度の研究計画に対し,進捗状況はおおむね順調であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
当初,平成28年度以降の研究計画として人物のトラッキング機能の実装を予定していた.人物検出についてはKinectを用いることで実現可能であるが,トラッキングの機能を実装するためには高速に投影画像を作成する必要がある.そこでGPUを搭載したPCにより,投影画像作成の高速化を行う. また,平成27年度の研究において20×20画素の解像度の映像を得ることに成功し,先行研究と比較して大幅な解像度の向上を実現しているが,投影画像として20×20画素では十分ではなく,さらなる解像度の向上が求められる.しかし,現在の手法では更なる解像度の向上は困難である.その原因として,プロジェクタの台数と糸配置の制約(2)が挙げられる.現在,1台のプロジェクタで投影しているために光線と糸が1対1に対応付けられる配置が限られてしまうが,プロジェクタの台数を増やし,別の方向からも映像を投影することで,この問題は解消される.そこで,平成28年度の研究計画として,マルチプロジェクションを利用した解像度の向上を新たに加える. さらに,平成27年度に行った研究において,糸配置の微調整が大きな問題となった.これは,投影距離の測定誤差などによりシミュレーションと実際に配置する糸の座標にずれが生じるというもので,更なる解像度の向上を目指すにあたり深刻な問題となる.そこで,シミュレーションを用いて座標を求め大まかに糸を配置した後に,Webカメラなどにより糸の配置座標を取得し,投影画像の方を修正するという,糸配置の半自動化機能を実装する予定である. これらを実現することにより,高指向性多視点ディスプレイによる精細な映像を展示会などへ持ち運んでの展示も可能となり,ディスプレイやアミューズメントの分野に大きな影響を与えられるものと考えている.
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Causes of Carryover |
当初計画と比較し,予算使用額が大きく異なるのは物品費である.これは研究計画申請時と交付申請時との予算額の差を埋めるため,ボリュームディスプレイの製作において既製品の購入や業者への発注をせず,素材を購入して手作りで製作したことに起因している.多くの時間と手間を要したが,当初計画と比べて遜色のない結果が得られており,さらに,今後研究を進めていく上での問題点も明らかになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度からの繰越予算を利用し,当初計画よりも発表の機会を増やすことを計画している.これまでの研究で問題として明らかになった糸の配置について,半自動化することができればボリュームディスプレイの作製時間を大幅に短縮でき,展示会での展示も可能となる.そこで,展示会での発表を目標とし,半自動化するための物品の購入および展示会での発表旅費として使用する.
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Research Products
(4 results)