2016 Fiscal Year Research-status Report
水文学と水質学による水資源開発のための非火山性の山体地下水の基礎的研究
Project/Area Number |
15K16113
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
中村 高志 山梨大学, 総合研究部, 助教 (60538057)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ネパール・カトマンズ盆地 / 山体地下水 / 非火山性山体 / 水資源 / 水質 / 地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、山体地下水を新たな水資源と捉え、これまで非火山性の山体の地下水について水文学と水質学の観点から水資源としての評価を行うことである。対象地域は非火山性の山体に囲まれ、山麓に複数の湧水(山体地下水の湧き出し)が確認できるネパール・カトマンズ盆地としている。本課題採択直後の2015年4月25日にカトマンズ北西77km地点を震源とするM7.8の大規模地震が発生し、死者8700人強、負傷者2万2000人強の甚大な被害が発生した。公団運営による上水道網にも被害がおよび住民にとって飲料水の確保が困難な状況となったことから、水質の良い山体地下水が重要な代替水源として注目される中での調査・研究となっている。 予定していた雨季および乾季の調査を完了し、水質ならびに各種安定同位体比の分析も完了した。これらのデータ解析によると、湧水規模が大きい地下水ほど乾季における湧水量の減少が少なく、日湧水量が5000L以下の小規模湧水については乾季に枯れてしまう傾向が強いことも確認でき、山体地下水の賦存量が湧水の規模で評価できる傾向があることが確認できた。 山体地下水の寄与域の把握を行うため、カトマンズの都市部の水道水源として利用されている深井戸の観測を行ったところ、多くの地域では地質由来のアンモニアならびに鉄の汚染が著しい結果がえられたものの、盆地北部の一部地域では良好な水質ならびに水量が確保できている地域があることが確認できた。これらの地下水の水源を推定するために、地下水ならびに山地域の湧水の同位体比を網羅的に観測した結果、この地下水は山体地下水を起源としていると考えられ、これらの平均涵養標高は2400ー2500mの山地域であること推定された。以上の様に水量・水質の観点から非火山性地域の山体地下水の水資源の実態が明らかになってきている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
被災により現地での水資源に関する情報の確保が急務となったため、計画より半期早い段階で現地調査ならびに試料採取を実施できた、本年度は追加調査を実施し、水文と水質解析で予定していた山体地下水の寄与域の推定および涵養域の把握、地下水流動経路の解析と、大腸菌・大腸菌濃度の分布、窒素汚染源の推定の初期解析が完了している。 震災により混乱する中、緊急水質調査も兼ねた現地調査を計画より早く実施し、水資源管理のための重要な情報を還元できたことは現地の研究協力者らの尽力によるものであり、ここに敬意を表する。
|
Strategy for Future Research Activity |
採取した水試料中の各種安定同位体比ならびに溶存フロンガスの測定結果を整理し、対象地域における山体地下水の滞留・流動特性、水質特性を整理し、水資源的価値の評価を実施する。また、本研究代表者が実施している甲府盆地の山体地下水の滞留・流動状況の調査・研究結果と照らし合わせ、山体地下水の流動が共通する点を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
・本課題の直後に発生した震災により、現地緊急調査を実施する必要があると判断したため、初年度および次年度は現地調査ならびに水質分析を優先し、購入を予定していたデータ解析ツールは上記の調査・水質分析が完了後に購入を行う計画変更を実施したため。 ・本課題では、雨季および乾季に採取した地下水試料について比較的高価なフロンガスの分析を実施するが、想定より雨季と乾季の水質ならびに水量の変動が大きい傾向があったため、2016年度に雨季の試料のフロンガス分析を行い、これらのデータを解析した結果、必要量の乾季サンプルの分析を2017年度に行うこととしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ解析ツールおよびフロンガスの分析については計画変更に従って、2017年度に使用する。
|
Research Products
(6 results)