2016 Fiscal Year Research-status Report
熱帯樹を用いた季節スケールの古気候/古環境変動の復元
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15K16114
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 裕美子 京都大学, 理学研究科, 助教 (20509939)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 樹木年輪 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は インドネシア産のチーク試料からセルロースを抽出し、炭素・酸素安定同位体比を測定するための化学処理方法を検討した。さらに、西部ジャワ産のチーク試料2個体について、過去29年分の年輪構成要素(同位体比・年輪幅)を計測し、気象観測データとの比較をすることにより古気候指標としての評価を行った。本年度は、昨年度検討した実験手法に基づいて、中部ジャワ産チーク試料4個体について、過去約70年にわたり年輪構成要素(同位体比・年輪幅)を測定することにより、個体間相関や空間代表性について検証した。 結果①: 中部ジャワ産チーク試料4個体の年輪ディスクについて年輪幅を計測した。年輪幅の時系列データを標準化し、ジャワ島のチークの標準年輪曲線と比較することでクロスデーティングを行い、樹木の生育時期を決定した。さらに、年輪幅の時系列データと降水量データとを相関解析したところ、生長期直前乾季の降水量と有意な正相関を示した。これは、生長する直前の乾季の降水量に応じて、次の生長期の肥大生長量が決まることを示唆している。 結果②: 上述の中部ジャワ産チーク試料4個体について、過去約70年にわたり年々スケールでδ18Oを分析した。4個体のδ18O時系列データには、有意な個体間相関があった。ジャワ島のチークに関する先行研究(Schollaen et al., 2013)や、昨年度測定した西部ジャワ産チーク試料2個体とも有意な相関があることから、ジャワ島広域においてチークのδ18Oは共通の気候情報を保持している可能性が非常に高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の予定通りに進み、樹齢70年ほどの中部ジャワ産チーク試料4個体を分析することにより個体間相関を検証し、これまで取得したデータと比較することにより空間代表性を確認することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
より長樹齢のチーク試料について過去に遡って分析を進めることにより、インドネシアの樹木データを蓄積していく。これと並行して、チークδ18Oのモデル化にも取り組み、樹木年輪が気候を記録するプロセスをより詳細に理解していきたい。同位体比のモデル化については本年度から取り組んでいるが、パラメーターの設定など改良を進めて、チークδ18Oのもつ気候学的な意味を正確に把握していきたい。
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Causes of Carryover |
実験補助を依頼して謝金を支払う予定でいたが、大学院での研究の一端として実験補助を行ってくれる院生がいたので、次年度の実験補助費として使用を延期することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
樹木年輪試料を分析するために必要な薬品や実験消耗品の購入に使用する。また年輪試料の観察など実験に時間を要する作業については実験補助者を依頼し、謝金を支払う。研究成果を国際学会および国内学会にて公表するために旅費を使用する。
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Research Products
(10 results)