2015 Fiscal Year Research-status Report
高温プラズマジェットを用いた大気エアロゾルのリアルタイム気化システムの開発
Project/Area Number |
15K16117
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
関本 奏子 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (40583399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プラズマジェット / コロナ放電 / 質量分析 / ヘリウム / アルゴン |
Outline of Annual Research Achievements |
大気エアロゾル質量の大きな画分を占める有機酸の大気中挙動の把握は,環境動態解析学分野の重要な課題であるが,エアロゾル相の有機酸を高感度かつリアルタイムに計測する手法の確立には至っていない.研究代表者はこれまで,気相の有機酸の高感度リアルタイム計測に有効な精密コロナ放電イオン化質量分析法を確立してきた.この手法をエアロゾル相に含まれる有機酸の計測に応用するために,本研究では,精密コロナ放電に高温ガス流を組み合わせることで発生するプラズマジェットを用いたエアロゾル気化システムを開発することを目的とする.平成27年度は以下の研究項目を遂行した. 1.高温プラズマジェットを用いた気化システムの構築 2.気化システムと精密コロナ放電イオン化質量分析計の接続および性能評価 1では,コロナニードル配置を精密調整するためのXYZステージの構築,質量分析装置のイオン導入管に装着可能なステンレス製リング電極,および高温ヘリウムガス流上流側に設置可能なグリッド電極を作製した.2では,1で作製した種々の部品を精密コロナ放電イオン化質量分析計に接続した.その後,プラズマジェットの発生と凝縮相の試料に由来する脱プロトン化分子の検出感度に関係する放電因子(すなわち,イオン導入孔の中心軸に対するコロナニードルの角度,対向電極の設置配置,および対向電極・ニードル・イオン導入孔間の距離)を質量分析計に導入される試料の脱プロトン化分子の量が最大になるよう最適化した.その結果,ニードル角度は90度,対向電極の配置はガス流上流側,対向電極とニードル間の距離は6 mm,ニードルとイオン導入孔間の距離は4 mmが最適であることを見出した. また,高温ガス流としてヘリウムを用いる代わりに,アルゴンを用いても高感度リアルタイム計測が可能になることを見出した.本成果については特許出願を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」に従い,平成27年度に遂行すべき研究項目は達成された.すなわち,高温プラズマジェットを用いた気化システムと精密コロナ放電質量分析計の接続に関する実験条件は最適化された.また,高感度リアルタイム計測をもたらす高温ガス流として,ヘリウムに代わりアルゴンも使用可能であることを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,今年度に構築した気化システム(高温ヘリウムガス流または高温アルゴンガス流)+精密コロナ放電イオン化質量分析計で観測される試料のイオン種とその生成機構を詳細に調査する.系統的に調査するために,試料として種々の化学的性質を有する数種のアミノ酸を用いる.本研究で得られる知見は,大気エアロゾルを気化・イオン化した際に得られるマススペクトルを解釈するための基礎となる.
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Causes of Carryover |
「研究実施計画書」に記載したように,2015年9月より,米国立海洋大気庁にて研究を行っている.本渡米の最終的な開始日程により,計画書申請当時に参加予定であった国際会議日程の都合がつかなくなった.よって,本会議への参加をキャンセルしたため,当該助成金が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国立海洋大気庁が所有する質量分析計の構造は横浜市立大学で使用していた装置と異なり,イオン検出の高感度化や気流の流れを調整するための部品が必要となることが判明した.このような部品を設計・構築するために,当該助成金を有効活用したい.
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