2015 Fiscal Year Research-status Report
河川から高頻度に検出される浮遊細菌による新規リン循環プロセスの解明
Project/Area Number |
15K16122
|
Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任 (50575230)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 浮遊細菌 / 河川 / リン循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
埼玉県内の10河川15地点の試料を対象に、高感度培養法により検出された浮遊細菌群の中に含まれるIRD18C08クラスターに属する浮遊細菌(以後、IRD18C08細菌と略す)の検出割合を調べた。その結果、1地点を除く14地点からIRD18C08細菌が検出され、平均すると高感度培養法で検出された全浮遊細菌の45.5%を占めていた。次に、そのうち検出された細菌叢が比較的単純であった1地点を選び、隔月で高感度培養法により検出される浮遊細菌叢を調べ、IRD18C08細菌の相対割合がどのように季節変動するのかを調べた。その結果、水温の下がる冬季においては全体の5~30%程度であるが、春季から秋季にかけては、50.0~63.1%を占めていた。以上の結果より、IRD18C08細菌は河川中に広く普遍的に存在し、特に高水温期にその割合が高くなることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。また、研究成果も着実に得られている。当初予定していたIRD18C08細菌の河川における現存量の把握については、今回得られた株の16S rRNA遺伝子配列データを基に、IRD18C08細菌を特異的に蛍光検出するためのオリゴヌクレオチドプローブを新たに設計することができたので、このプローブを用いて河川中における現存量の把握を進めていく予定である。また、高感度培養法と次世代シーケンサーを用いた環境遺伝子解析により得られる浮遊細菌叢とのデータの整合性の検討、およびIRD18C08細菌の純粋分離株のドラフトゲノム解析用のサンプルについても準備を終え、協力研究者のもとに既に送付済みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
IRD18C08細菌は細菌内にリンを高濃度に蓄積する能力を有しており、活性汚泥から得られた細菌を除くと自然環境中から初めて分離培養に成功したリン蓄積細菌である。このリン蓄積細菌は、属レベル以上で新規性が認められるため、新属新種の細菌として記載登録する手続きを早急に進めることとした。これまでの研究では、IRD18C08細菌が河川に普遍的に存在しているのか、またどのように季節変動しているのかについて明らかにしてきた。今後は、これまでの研究で得られたIRD18C08細菌の純粋分離株を用いて、その生理、生態および遺伝学的特性を明らかにし、どのような機構でリンを取り込み、蓄積し、また排出するのかメカニズムを解明し、IRD18C08細菌が河川環境中においてどのようにリン循環へ寄与しているのかを明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
当初、IRD18C08細菌を特異的に蛍光検出するオリゴヌクレオチドプローブを作成し、河川水中の現存量を明らかにする予定であった。しかし、IRD18C08細菌を当初の予定よりも多く分離培養することに成功したため、16SrRNA遺伝子による系統解析を行ったところ、多様性に富む系統群であることが明らかとなった。そこで、詳細な配列比較を行ったのちにプローブを設計する必要性が認められたため、本年度はプローブの設計を主に行い、そのプローブを用いた解析は次年度に行うこととした。そのため、これらの実験に使用する予定であった消耗品費が次年度使用額として生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
詳細な配列比較により、IRD18C08細菌を特異的に蛍光検出するオリゴヌクレオチドプローブを設計することができたので、次年度は、このプローブを用いて蛍光検出法(CARD-FISH)による河川中のIRD18C08細菌の現存量を明らかにする実験を行う。従って、次年度使用額については、上記実験を行うためのプローブおよびその他実験作業に使用する消耗品の購入に使用する予定である。
|