2016 Fiscal Year Research-status Report
河川から高頻度に検出される浮遊細菌による新規リン循環プロセスの解明
Project/Area Number |
15K16122
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Research Institution | Center for Environmental Science in Saitama |
Principal Investigator |
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任 (50575230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 河川 / 物質循環 / 浮遊細菌 / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に埼玉県内の10河川15地点の試料から得られたポリリン酸蓄積能を有するIRD18C08クラスターに属する浮遊細菌(以後、IRD18C08細菌と略す)164菌株のうち、16S rRNA遺伝子が系統分類的に異なる8菌株について、ポリリン酸蓄積能の違いをDAPI染色による蛍光顕微鏡観察で調べた。ポリリン酸蓄積能の高い株と低い株に明確に分かれたが、それらは系統学的位置に無関係であり、株間の違いによるものであることが明らかとなった。ポリリン酸蓄積能の高かったSHINM1株について、ドラフトゲノム解析を行った。ポリリン酸蓄積に関与するポリリン酸キナーゼ遺伝子にはppk1とppk2の2種類が知られているが、SHINM1株はppk1とppk2の2種類を有していることが明らかとなった。一方で、細胞外へのリン酸輸送にかかわる遺伝子であるpitAおよびpitBは、SHINM1株には見られなかった。平成27年度は、IRD18C08細菌164株の16S rRNA遺伝子情報から、特異的に蛍光検出(CARD-FISH法)するためのオリゴヌクレオチドプローブを設計した。平成28年度は、そのプローブを使った最適蛍光検出条件の検討および実際の河川水中のIRD18C08細菌の現存量の把握を行った。埼玉県内河川の5地点については、IRD18C08細菌は河川水中の全浮遊細菌の8~28%程度存在していることが明らかとなった。IRD18C08細菌によるリンの取込み特性、遺伝学的特性および河川における生態など本研究を通じて初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。また、研究成果も着実に得られている。あとは成果のとりまとめ及び論文を速やかに発表する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、CARD-FISH法により埼玉県内の5河川におけるIRD18C08細菌の経月変動をモニタリングし現存量の推定を行う。IRD18C08細菌を使った室内実験により、細胞内へのリンの取込みおよび細胞外への放出量を明らかにし、得られた現存量のデータから、河川内でIRD18C08細菌を介してどのくらいのリンが動いているのかを明らかにする。16S rRNA遺伝子配列による系統解析では、分離したIRD18C08細菌は新属・新種であると推定された。平成29年度は、IRD18C08細菌のキノンや脂肪酸組成、基質代謝などの生理学的情報を集め、新属・新種として提案する予定である。また、IRD18C08細菌の全ゲノムを決定し、国際塩基配列データベースへの登録および一般公開も進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に予定していたPacBio RS IIによる次世代シーケンシング、SHINM1株の新属・新種提案に関わる生理性状分析、キノン分析、脂肪酸分析などについて、平成29年度当初に分析計画を移したため。また、IRD18C08細菌の現存量をCARD-FISH法により把握するにあたり小型インキュベーターの購入を予定していたが、平成28年度は最適検出条件の検討に時間がかかり、河川サンプルを測定し始めたのが年度末となった。まだ検体数が少なかったので現有の機器で対応した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度始めにPacBio RS IIによる次世代シーケンシング、SHINM1株の新属・新種提案に関わる生理性状分析、キノン分析、脂肪酸分析を行う予定である。また、CARD-FISHによるIRD18C08細菌のモニタリングは、実際の試料によるモニタリングにより検体数が多くなるため、平成29年度当初に小型インキュベーターの購入を予定している。
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