2015 Fiscal Year Research-status Report
メチル水銀が示すコレステロール代謝因子の脳特異的発現誘導とその意義
Project/Area Number |
15K16133
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
岩井 美幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 研究員 (80723957)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | メチル水銀 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
メチル水銀は強力な神経毒性を有し、脳に対して選択的にダメージを与える。しかしながら、メチル水銀が示す毒性発現機構は未だほとんど解明されていない。本研究は、メチル水銀の示す脳特異的毒性発現機構におけるCH25H(コレステロール25水酸化酵素)の役割を検討するものである。当該年度は、メチル水銀曝露によって発現レベルが上昇する遺伝子であるCH25Hの発現変動と脳内での発現特異性の検討(1)、ならびに神経細胞での発現レベルの検討を行った(2)。 (1)近交系マウスC57BL/6に25mg/kgbw(as Hg)の塩化メチル水銀を皮下投与し、1,3,5,7日目にそれぞれ解剖した。脳組織、肝臓および腎臓でのCH25HのmRNA発現レベルを確認したところ、1日目に大脳および小脳で非投与群に比べて10倍程度発現レベルが上昇し、3日目に2倍まで低下後、5日目および7日目に再び発現レベルが10倍程度まで上昇した。投与量依存性についても確認し、10, 15, 20, 25mg/kgbw(as Hg)の塩化メチル水銀を皮下投与し、発現をみたところ、投与量依存的に発現レベルが上昇した。肝臓での発現は顕著でなかった一方で、腎臓でも発現レベルの上昇がみられた。しかしながら、メチル水銀の蓄積量から考えると、脳での発現上昇がより顕著であった。さらに脳内での発現特異性について、in situ ハイブリダイゼーションと免疫染色による2重染色を実施したところ、GFAP(Glial Fibrillary Acidic Protein)発現細胞でCH25Hの発現が重なる一方で、Iba1(Ionized calcium binding adaptor molecule 1)発現細胞との重複は確認されなかった。以上の結果から、メチル水銀曝露によってアストロサイトでCH25Hの発現がみられることが明らかになった。(2)細胞の検討では、神経幹細胞であるC17.2およびミクログリア細胞のBV2を用いて、メチル水銀の添加後CH25Hの発現を確認した。細胞生存率が60%程度になるとCH25Hの発現上昇が顕著であり、特にC17.2でより発現上昇がみられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度予定していたコレステロール水酸化酵素の発現量の変動とメチル水銀毒性との関係についても合わせて検討し、研究自体は概ね順調に進展してきたものの、産休および育休もあり研究従事期間が短かったこともあり、十分な成果発表ができていないことが課題となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、アストロサイトやミクログリア以外でCH25Hの発現がみられないかニューロンマーカー含め他の因子との2重染色も必要か検討する。その結果をもとに、脳内でアストロサイト特異的にCH25Hが発現し、メチル水銀毒性に関わっているのか明らかにする。さらにCH25Hの代謝産物がメチル水銀毒性にどのように作用しているのか明らかにし、成果発表につなげたい。
|