2016 Fiscal Year Research-status Report
異物代謝における魚類の脱臭素化能と尿素合成能の関係
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15K16134
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱臭素化 / ハゼ科 / ドジョウ亜科 / 脱ヨウ素酵素 / BDE99 / コイ目 |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類に種特異的に起こるPBDEsの脱臭素化は、甲状腺ホルモン活性化酵素である脱ヨウ素酵素(DI)によって起こるとされているが、なぜ種差があるのかが不明である。そこで本研究では、高い脱臭素化能を持つアベハゼに着目し、DIによる脱臭素化能とアベハゼの持つ尿素合成能の関係を検証することを目的とした。 2015年度はハゼ科を含む様々な魚類のBDE99蓄積状況を調べ、ハゼ科ではアカオビシマハゼ中でBDE99が検出されたことから、アベハゼのBDE99脱臭素化の特異性が支持された。2016年度はさらに種数を増やした結果、新たに分析したカワヨシノボリ、ドロメ、チチブにおいてBDE99は検出されなかった。このことから、ハゼ科におけるBDE99の脱臭素化能はアベハゼに特異的ではなく、ハゼ科の中でも脱臭素化能を持つ種と持たない種とが混在することが明らかになった。アベハゼ、ドロメ、マハゼ(BDE99蓄積あり)の肝ミクロソームを用いて脱臭素化能を調べた結果では、BDE99の脱臭素化能はマハゼを1とした時にドロメでは20倍、アベハゼは200倍と、アベハゼの脱臭素化能の高さは極めて高かった。 2015年度は分析したコイ目全て(ドジョウ科ドジョウ含む)においてBDE99の蓄積が認められなかったが、2016年度に新たに分析したコイ目ドジョウ上科タニノボリ科であるホトケドジョウにおいてBDE99が検出された。BDE99の脱臭素化能はコイ目ではなくコイ科にのみ共通した性質であり、ドジョウ上科内では異なることが明らかになった。 また、2016年度は、非モデル生物であるアベハゼのDeiodinase2型(DIO2)のプライマー設計およびアベハゼ肝臓からRNA抽出を行い、DIO2発現を確認する手法を確立した。 また、アベハゼ属内における脱臭素化能の差を調べるために、アベハゼ以外のアベハゼ属の試料採取を沖縄県西表島にて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、マハゼ(BDE99蓄積有)、アカオビシマハゼ(BDE99蓄積有)、アベハゼ(BDE99蓄積なし)の3種のハゼ科のBDE99蓄積状況からアベハゼの脱臭素化能に着目してきたが、2016年度に新たに分析したハゼ科3種ではいずれもBDE99の蓄積は認められず、これまでの仮説を覆すものとなった。しかい、BDE99蓄積はアベハゼに特異的ではなかったが、BDE99脱臭素化能は非BDE99蓄積種の中でも高い可能性が示された。このことから、尿素合成能との関係は引き続き調べていく意義はあると考えている。一方で、脱臭素化はコイ目に共通した性質と考えられてきたが、ドジョウ亜科の中でも種による脱臭素化能の違いが存在する可能性が示唆された。種差要因を明らかにするうえでの手がかりが増えたとみなすことができるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、BDE99蓄積状況と肝ミクロソームを用いた脱臭素化能およびDIO2配列の比較を行い、コイ科、ドジョウ亜科、ハゼ科の非BDE蓄積種においてDIO2配列に共通性があるかどうかを調べる。また、アベハゼ属内におけるBDE99蓄積状況の把握およびDIO2配列の比較も実施する。アベハゼ属内で脱臭素化能が一様にあった場合は、尿素合成能との関係は弱まるが、DIO2配列がアベハゼおよびその他のBDE99非蓄積生物と類似しているかどうかに着目する。アベハゼ属内で脱臭素化能が一様になかった場合は、脱臭素化能が周囲の汚染状況に左右されていないかを調べるために飼育実験が必要となる。アベハゼ属内で脱臭素化能と尿素合成能に関係が認められた場合は、アベハゼの脱臭素化能が周囲の汚染状況に関わらず高いかどうかを調べるために飼育実験が必要となる。これらを踏まえて、アベハゼの脱臭素化能と尿素合成能の関係を調べるための飼育実験を実施する。
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Causes of Carryover |
2016年に論文を1報出す予定であったが、送れているために英文校閲費用に余剰が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に英文校閲費として利用する。
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Research Products
(2 results)