2015 Fiscal Year Research-status Report
海産ミミズと土着・随伴微生物群の協同的作用による沿岸底質浄化メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K16144
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
伊藤 真奈 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (60735900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海産ミミズ / 土着微生物 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸域の一部では、有害化学物質による底質汚染が問題となっており、安全かつ効率的な浄化技術の開発が求められている。このような背景のもと、これまで汚染底質に生息可能で、さらに有害化学物質分解能を有する海産ミミズを発見・単離し、新規バイオレメディエーションの担い手としての可能性を検討してきた。本研究では、海産ミミズによって促進される底質中有害化学物質の分解メカニズムを、土着・随伴微生物との相互補完的作用という観点から解明することを目的としている。 H27年度は、実環境中の複合汚染底質を滅菌した底質および未滅菌底質を用いてマイクロコズムを作成し、一定期間海産ミミズを飼育後、沿岸域底質において特に汚染が懸念されている多環芳香族炭化水素(PAHs)の底質中濃度を測定することで、微生物と海産ミミズによる協同的PAHs分解機構が存在するかを検討した。その結果、土着微生物および海産ミミズ共存下で底質中PAHsの減衰がもっとも高いことが認められた。また、海産ミミズを添加することで、土着微生物の存在に関わらずPAHsのなかでも3環のPAHsが、さらに土着微生物共存下では、4環PAHsが顕著に減衰することが示された。また、海産ミミズ添加による土着微生物への影響を検討するため、16SrRNAを対象とした菌叢解析を実施した結果、海産ミミズを添加することで、底質中の土着微生物は独自の菌叢へ遷移することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
底質中に含まれる多環芳香族炭化水素の減衰メカニズムとして、海産ミミズと土着微生物の協同的作用の存在が示すことができた。さらに、菌叢解析の結果から、PAHs分解への関与が想定されるいくつかの配列を特定することができ、H28年度以降の研究基盤となる情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
海産ミミズの活動による、有害化学物質の海水中への溶出の有無を検討する。また、海産ミミズ添加による底質中の菌叢遷移をより詳細に解析し、PAHs減衰への寄与が想定される微生物の推定および定量法を確立する。さらに、確率された定量法を元に、マイクロコズム内での微生物の局在性の有無などを検討する。
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Causes of Carryover |
H27年度当初計画では、有害化学物質分解を担う機能遺伝子について、既知情報を基に特異的プライマーを作成し、その多様性および遷移を解析する予定であったが、滅菌底質の作成方法および、滅菌底質内での海産ミミズの飼育維持の検討に時間を要し実施することができなかった。よって、プライマーの購入経費などが次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度内において、海産ミミズの飼育方法などが確率することができたため、H27度に実施できなかった機能遺伝子の多様性および遷移についてはH28年度計画と合わせて実施する予定である。
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