2015 Fiscal Year Research-status Report
反応性末端を有するバイオポリエステルの微生物合成と構造制御による高性能化
Project/Area Number |
15K16147
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
百武 真奈美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 訪問研究員 (90733957)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポリヒドロキシアルカン酸 / バイオポリマー / PHA重合酵素 / 高分子合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラム陽性細菌Bacillus cereus YB-4由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)重合酵素(PhaRC)は、合成したPHAのエステル結合を切断しアルコールを付与する加アルコール分解能を有する。本研究ではこの分解能を用いて、分子鎖末端に官能基を有するPHAの微生物合成と、それを用いた構造制御された高分子材料の創製を目指す。 本年度はまず、付与可能な末端構造を調査した。PhaRCを発現させたEscherichia coliにPHAを合成させた後、各種アルコールを添加した培地中で培養し、得られたPHAの末端構造をNMRにより解析した。その結果、3-メルカプト-1-プロパノールや2-プロピン-1-オールを添加することで、チオール基やエチニル基といった反応性の高い官能基をPhaRCの触媒能によりカルボキシ末端へ導入できることを確認し、これらの末端構造を有するPHAの微生物合成に成功した。 次いで、これら末端修飾PHAの生産を高めるための培養条件について検討した。糖を炭素源としたPHA生産時には、エタノールが同時生産されることが報告されている。PhaRCはエタノールを基質としてもPHAを加アルコール分解することを確認しているため、任意のアルコールによる修飾率を高めるにはエタノール生産が少ないことが望ましい。したがって本研究ではPHA合成に伴うエタノール生産が少ないことが報告されているE. coli XL1-Blueを宿主に選択し、2-プロピン-1-オールを末端修飾の基質として添加したところ、修飾率97.1%で末端にエチニル基を有し、分子量分布が単峰性のPHAを合成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はPhaRCを用いて、反応性の高い官能基を末端に有するPHAを合成することができた。またPHA生産の宿主を選択することにより、高い末端修飾率を有するPHAを約7 g/Lと高効率で生産できた。この値は、アルコール添加による宿主の生育阻害はほとんど無いことを示しており、同時に高修飾率を達成している。このように当初の計画通り研究が進展していることから、研究はおおむね順調に進展したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、付与した末端官能基の反応性について調査することを第一とする。高分子の末端はその自由度が低いため、低分子と比べて反応性に乏しい可能性がある。そこで付与した官能基と反応性を示す標識試薬を用いて、末端官能基の反応性を調査する。 反応性があることを確認できた場合には、末端修飾PHAと他分子を反応させ構造制御されたPHAの合成を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、試薬の購入量が計画当初の予想より少なく済んだことがあげられる。PHA末端に導入可能なヒドロキシ化合物種の特定において、当初は培養系への供給濃度を細かく振り分けることを検討していた。しかしながら条件検討1回目においてPHA末端への導入が確認された化合物種が多くあり、その結果、試薬の購入量が少なく抑えられ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した研究費の大半は、物品費(主に消耗品)にあてることで、サンプル調製のための培養実験を効率的に進め研究のさらなる効率化を計る。 また、本年度の成果を学会発表するための旅費や学会参加費として使用する予定である。
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