2016 Fiscal Year Annual Research Report
Risk assessment of cardiovascular toxicity by atmospheric microparticles
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15K16148
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
小野寺 章 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (40598380)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管弛緩 / 高血圧 / PI3K / レニン |
Outline of Annual Research Achievements |
疫学研究では、大気中の微小粒子状物質の増加が「心血管毒性を惹起し心疾患による死亡率の原因になる」と報告されている。一方、これら毒性発現の原因成分(微小粒子状物質の構成因子)は不明であり、リスク評価法も確立されていない。そこで本申請課題は、大気中の微小粒子状物質による心臓や血管への影響とその作用メカニズムの解明を目的に、最終年度においては非晶質シリカナノ粒子による血管弛緩反応の作用メカニズムと酸化亜鉛ナノ粒子による血圧増加のメカニズムの解明を推進した。前者においては、血管弛緩反応の主要なシグナル経路として知られているPI3Kシグナル、PGIシグナル、Ca2+シグナルの3経路との関連を種々シグナルの特異的阻害剤を用いて解析し、非晶質シリカナノ粒子がPI3Kシグナルを介し血管弛緩を惹起することを見出した。さらに、ウシの血管内皮細胞を用いた解析により、非晶質シリカナノ粒子はPI3Kシグナル下流のAkt-eNOS経路を活性することが明らかとなった。後者においては、酸化亜鉛ナノ粒子により血圧が増加したマウスの血清を用い、レニン-アンジオテンシン系との関連を解析した。その結果、血清中のレニン活性およびナトリウム濃度の増加を見出した。以上より、化粧品や工業品に含まれるナノ粒子は、従来素材であれば想定されなかった心血管系への作用・毒性を惹起することが明らかとなった。一方で、ナノ粒子による心血管系への作用メカニズムは、ナノ特異的なものではなく、既知のシグナル系を介するものであったことから、心血管でのナノ毒性の予測や評価には、既知の評価系やマーカーが有用であると示唆された。
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