2015 Fiscal Year Research-status Report
亜熱帯林における群集形成プロセスの空間変異に着目した伐採インパクト評価
Project/Area Number |
15K16153
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
楠本 聞太郎 琉球大学, その他部局等, 助教 (90748104)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 群集集合 / 生物多様性 / 森林管理 / 機能特性 / 群集系統 / 亜熱帯林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琉球列島の樹木群集の形成機構の解明および、それらに対する森林施業のインパクト評価を目的としている。平成27年度は、野外調査を行うとともに、既存の毎木調査データを用いて群集生態学的アプローチに基づく解析を行った。屋久島、徳之島、沖縄本島において、樹木群集構造に関する情報が不足している地域を中心に、野外調査を実施し(合計383地点)、各地点での樹木群集の種組成を記録した。また、西表島においては、樹木の葉、幹のサンプルを採取し、機能特性の測定を行った。毎木データを用いた解析では、琉球諸島の3島(沖縄島・奄美大島・西表島)において、時系列で設置された毎木調査データ(地点ごと、樹木種ごとのアバンダンス)、および琉球列島産樹木種の機能特性情報(比葉面積、葉中窒素濃度、最大樹高、材密度)、種レベルの系統樹情報を用いて、遷移に沿った樹木群集集合プロセスの変化を検証した。各樹木群集の機能的・系統的構造(群集構成種間の重み付き距離)を計算し、それらのランダムからの逸脱を評価することで、卓越する生態プロセス(種間競争、分散制限、環境フィルター)を推察した。結果として、琉球列島の亜熱帯林では、確率的な集合プロセス(例:分散制限など)が卓越しており、決定論的なプロセスの影響は比較的小さいことが明らかになった。また、遷移系列に沿った群集集合プロセスの変化は不明瞭であることが明らかになった。これらの結果は、琉球列島において、皆伐後の樹木群集構造の変化を予測することの難しさを表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
琉球大学・理学部の研究チームの協力を得ることができた。これにより、調査要員、データ入力・整備要員をスムーズに確保できたため、野外観測データおよび既存の文献情報を計画通りに収集することができた。また、既存毎木調査データを用いた解析によって、琉球列島における、皆伐後の遷移系列にそった群集集合プロセスの全体的なトレンドを明らかにすることができた。これらの成果は既に学術論文としてまとめており、国際誌にて審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの調査や、既存文献でも情報が無い地域(特に西表島)において、群集構造調査を進める。また、これまでの解析では、時系列プロットを用いて、遷移に沿った群集集合プロセスを評価していた。時系列アプローチは、森林のように長い時間スケールで変化する生物群集の研究では有効な手法である一方、時間的な変化のシグナルを見るために、空間的なばらつきを平均化してしまうという問題もある。今後は3つのアプローチでこの問題に取り組み、伐採に対する樹木群集の応答をより詳細に検証していく予定である:1)群集データの空間的網羅度を上げ、様々な環境要因と林齢を含めた解析を行い、それぞれの相対的重要性を評価する、2)大面積プロットのサイズ構造別の群集データを使い、群集全体の機能的・系統的構造、群集内部の微小環境の異質性および個体の空間構造との関係を検証する、3)既存のモニタリングデータを用いて、群集集合プロセスの時間変化を直接的に解析する。
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Causes of Carryover |
今年度の野外調査が、予定していたよりも若干短い日数で完了したため、余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の野外調査のための調査道具(消耗品)を購入する。
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