2015 Fiscal Year Research-status Report
再生可能エネルギーの出力変動対策と熱源低炭素化のための電力・熱統合システムの提案
Project/Area Number |
15K16154
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 研悟 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50634169)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / 二酸化炭素排出削減 / 電力・熱供給システム / 電力系統安定化 / 低炭素熱源 / 風力発電 / 太陽光発電 / コジェネレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初、構築済みの電力システムモデルを熱システム解析用に拡張し、北海道地域を対象とする再生可能エネルギー(以下再エネ)出力変動対策の経済性解析を行う予定であった。しかし研究を進めるうち、経済性解析に先立って再エネ発電設備の利用効率に着目した解析を行った方がよく、また再エネ供給地と大都市との地域差を考慮する必要があることがわかった。そこで本年度は以下の3点につき研究を進めた。 1.出力変動対策による設備利用効率の向上効果解析:電力需要に占める風力・太陽光発電の割合を、発電設備の利用効率を下げずにどこまで高められるか調べた。ガス火力発電のみで調整する場合は40%が上限だったが、発電所の地理的分散配置・水力発電の動的運用・蓄電池による変動対策により、北海道を対象とする本研究の解析条件では、発電設備をある程度有効に利用しながら60%まで高められることがわかった。 2.再エネ供給地と大都市との地域差を考慮した解析:北海道を4地域に分け、電力需要と再エネ出力変動の地域性や地域間の送電容量を考慮した解析を行った。送電線増強・蓄電池導入がない場合、風力・太陽光発電の割合が50%まで増えると利用効率が大幅に低下した。風況のよい道北と大需要地の道央を結ぶ送電線を増強し、道北に蓄電池を集中的に配置すると、風力・太陽光の割合が50%でも比較的高い利用効率を維持できた。蓄電池の導入効果は再エネ導入量が増えるにつれて高まることがわかった。 3.熱システムを含めたモデル解析:余剰電力の熱転換を出力変動対策として追加し、発電設備の利用効率への影響を調べた。蓄電池と熱転換による利用効率向上効果を調べたところ、北海道を対象とした今回の条件では、単独の対策としてはどちらも同程度の効果があることがわかった。また両者を組み合わせることで、単独の対策よりもより多くの余剰電力を有効利用できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述のように、本年度計画していた経済性解析はまだ完了していないが、これは追加的に必要となった解析を行ったためであり、研究計画自体に問題があったわけではない。むしろ、将来的な不確実性の高い経済性を除き技術的な問題に焦点を合わせた解析を行ったことで、さまざまな出力変動対策の特長の違いを明らかにすることができ、経済性を含めた今後の解析を円滑に進めることが可能になったと考えられる。熱供給システムのモデル化についてもある程度は進んでおり、コストデータを追加すれば経済性解析に進むことが可能である。先述の研究成果を元に3件の学会発表を行うとともに1本の英字論文を投稿中であり、研究成果もある程度順調に出せていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をふまえ、来年度は電力・熱システムの統合による再エネ出力変動への対策コストの削減効果を解析する。さらに、CO2排出削減量と対策コストの関係や、経済・社会情勢の変化が解析結果に与える影響について感度解析を行い、経済性と環境性を両立させる電力・熱統合システムの構成を明らかにする。 1.経済性解析:モデルを完成し、熱供給技術の追加による再エネ変動対策コストの削減効果を調べる。これまで解析対象とした発電所の地理的分散配置・水力発電の動的運用・送電線増強・蓄電池に加え、コジェネレーションによるバックアップと余剰電力の熱転換を変動対策に追加し、変動対策コストの削減効果を調べるとともに、その削減メカニズムを明らかにする。 2.社会への受容性解析:CO2排出削減が義務付けられた状況を想定し、CO2排出削減量とエネルギー供給コストのトレードオフ曲線を作成し、その曲線形状から社会的に需要可能な排出削減量およびシステム構成を明らかにする。また、将来の技術進展や経済・社会的状況には不確実性があることから、対策技術の設備費用や化石燃料価格などについて複数の解析ケースを用意し、各ケースの結果を比べる感度解析を行う。 以上の結果を総合し、経済性と環境性を両立させる電力・熱統合システムの構成を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は2回の国際学会出張を予定していたが、研究計画の修正と進捗を勘案し1回とした。主としてその変更による旅費の減少により50万円強を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿済・査読プロセス中の英語論文が掲載可となった場合、追加料金を払うことでオープンアクセスにできることがわかったため、海外への情報発信を強めるため、繰越金の一部をオープンアクセス料金として用いる。また、所属機関の変更によりシミュレーション用の計算機を新たに購入する必要が生じており、繰越金の残りは計算機の購入に充てることを計画している。
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