2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト過疎時代における資源管理型狩猟に関する民俗知形成のモデル構築
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15K16162
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
蛯原 一平 東北芸術工科大学, 付置研究所, 講師 (40589371)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 資源管理型狩猟 / 民俗知形成 / 狩猟担い手育成 / 猟場選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では狩猟活動への同行に基づく活動の記録や、新規狩猟者の動向・育成などに関する聞きとり等の資料調査を通し、狩猟に関する民俗知の形成過程について明らかにする。加えて台湾パイワン族でなされている狩猟担い手育成に関する先行事例についても情報収集し、かつ研究協力者との相互議論を通し、その課題についても精査を行う。初年度は資料収集期間とし現地調査による資料収集を重点的に進めた。具体的な内容と成果は以下の通りである。 狩猟活動に関する現地調査として、4~5月に山形県小国町での春期クマ猟(ツキノワグマの生態調査と予察駆除)に同行し、活動の記録を行った。そして猟場の決定や共同猟の実践において不可欠となる地形地理を中心とした民俗知の形成過程に関する具体的資料を得ることができた。また11月に沖縄県竹富町(西表島)において現地調査を実施し、当地で行われているイノシシ罠猟の知識継承に関する基礎情報の収集を図った。さらに、岩手県花巻市・盛岡市での、NPOによる新規狩猟者への狩猟技術・知識伝承の取り組みに関し関係者への聞きとりに基づき資料を収集した。 一方、台湾台東県での現地調査を9月に行い、同地でなされてきた狩猟文化の担い手育成に関する取り組みの概要を把握した。さらに互いの事例を報告しあい課題共有を図るためのワークショップ開催についても研究協力者と意見交換を行い、次年度以降の開催に向けた準備に着手することができた。 以上のように、本年度は当初計画したほぼ全ての調査活動を始動させることができ、次年度での継続調査に基づく資料蓄積のための調査環境を整備することができた。また、現地調査を通し、台湾での事例が国内でのモデル構築において有効な視座を供しうることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ほぼ計画通り現地調査を実施することができた。とりわけ山形県小国町での狩猟の同行・聞きとり調査では当初の見込み以上の資料を得ることができ、資料収集という点において研究は順調に進展している。しかしその一方、それらの資料整理に時間を要し、十分な分析には至っていない。また、資源管理型狩猟についても先行研究との比較検討に基づく考察が不足しており、当初予定していた、資源管理型狩猟と民俗知形成に関する問題提起を年度内に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い現地調査を継続実施し、さらに資料の蓄積を図る。ただし、資料整理を円滑に行うためテーマを絞った上での効率的な調査実施に心がける。そして、学会発表やワークショップ開催準備、猟場地図・伝承ハンドブックの作成準備など具体的な成果公開に向けた分析を加速させる。あわせて関連文献の収集とレヴューを進め、資源管理型狩猟の具体化と事例研究との統合、モデル化を図ってゆく。
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Causes of Carryover |
研究採択後、最大の成果を導くことができるよう支出計画の見直しを行った。とりわけ2年度以降実施予定の研究協力者とのワークショップの開催やハンドブック作成は、モデル構築を目指す本研究の根幹をなすものであり、関係者の招聘旅費や編集・印刷等、そのための費用は欠かすことができない。そこで初年度は、資料収集に大きな影響がでない範囲で物品費や旅費、人件費・謝金等を見直し、繰越金をそのための費用に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年度以降開催予定のワークショップへの関係者招聘旅費や調査協力者への謝金、ハンドブック(もしく猟場地図)の編集印刷に係る経費に使用する予定である。また、初年度に不十分であった関連文献の収集等、研究環境整備のための物品費にも一部用いる。
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