2015 Fiscal Year Research-status Report
丸平編物における視覚的審美特性の計測と設計方法に関する研究
Project/Area Number |
15K16179
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若子 倫菜 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30505748)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 編布 / 視覚 / 美 / 計測 / 設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,ベージュ系タイツ類(丸平編物)の視覚的審美特性を計測,設計する方法の確立である.そのために,①「素肌脚部らしさ」と関係している明度差分布と編布の物理的特性との関係,②編布の物理的特性と編機の製編条件との関係を明らかにすることが課題である.平成27年度は,編布の物理的特性を用いて明度差分布を求める方法を確立することに取組んだ. 明度差分布は,着装脚部の明度画像と素肌脚部の明度画像との明度差の分布画像のことである.したがって,明度差に強く影響をおよぼすのは,編布によって被覆されている領域(以後,被服率CFと表す)の,着装前後における明度の変化(以後,糸領域明度Pの変化と表す)である.そこでまず,被服率CFを編布の物理的特性である編目密度(単位長さあたりの編目数)と見かけ糸太さとを用いて求める関係式を検討した.被服率CFは,CF=d(c+2Y/c)(ただし,d:見かけ糸太さ,c:コース密度,Y:見かけの編目密度)の関係式によって求められることを明らかにした.次いで,糸領域明度Pと素肌脚部明度Lとの関係式を検討した結果,P=0.7L+45.7の関係が成り立つことを明らかにした.さらに,被服率CFと糸領域明度Pの各関係式を用いて明度差分布の算出を行った.関係式を用いて算出した明度差分布画像のヒストグラムと,従来の方法(着装脚部の明度画像と素肌脚部の明度画像との2画像から求める方法)によって求めた明度差分布画像のヒストグラムとを比較したところ,特徴の類似した結果が得られることがわかった.2種類の明度差分布画像を見比べてみても,類似した分布画像が得られていることが認められた. これらの成果によって,編布の物理的特性を用いた素肌脚部らしさの計測や設計を可能にするための基礎的な知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,ベージュ系タイツ類(丸平編物)の視覚的審美特性を計測,設計する方法の確立である.そのために,①「素肌脚部らしさ」と関係している明度差分布と編布の物理的特性との関係,②編布の物理的特性と編機の製編条件との関係を明らかにすることが課題である.平成27年度の研究計画では,編布の物理的特性を用いて明度差分布を求める方法を確立することとして,3つの検討項目を設定した. 1つ目は,編布の物理的特性である編目密度と見かけ糸太さを変数とする被服率CFの算出式を求めることである.編布構造を単純化した編布モデルを設定し,モデルに基づいた被服率CF算出式を導出した.伸長状態の様々に異なる編布試料を作成し,各試料の被服率CFと,編目密度,見かけ糸太さ等を実測するとともに,算出式による結果と比較検討して被服率CFの算出式を得た. 2つ目は,素肌脚部明度Lを変数とする糸領域明度Pの算出式を求めることである.伸長状態の様々に異なる編布試料と,明度の異なる5種類の疑似素肌脚部試料を作成した.これらの試料を組合せた画像から糸領域明度Pと素肌脚部明度Lとを計測し,回帰分析により糸領域明度Pの算出式を得た. 3つ目は,被服率CFおよび糸領域明度Pの算出式を用いた明度差分布算出方法を確立することである.5種類の明度の疑似素肌脚部について,2種類の画像から求める従来方法による明度差分布画像と算出式による明度差分布画像とを求めた.各明度差分布画像とそのヒストグラムをそれぞれに比較した結果,両者の特徴が類似していることを確認できた. 当初予期していなかった問題点は,被写体とカメラとの撮影距離の画像明度への影響が大きかったことである.しかしながら,撮影距離と画像明度との関係の調査と適用方法も含めて平成27年度に計画した全ての項目を達成することができたため,「おおむね順調に進展している」ものと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究計画は,(1)平成27年度の成果である編布の物理的特性を用いて明度差分布を求める方法を,原糸の種類を追加してデータベース化することと,(2)丸編機の製編条件をパラメータとする編布の物理的特性についての関係式を求めることである.(1)に関する検討項目は,原糸の種類を変更してそれぞれの被服率CFおよび糸領域明度Pの算出式を求め,明度差分布算出方法をデータベース化することである.(2)に関しては2項目を設定しており,(2-1)丸編機の製編条件である供給糸張力,編立速度,巻取張力,度目などが編目密度と見かけ糸太さにおよぼす影響を調査することと,(2-2)重回帰分析などを用いて関係式を得ることである. 平成29年度の研究計画は,平成28年度の検討項目である丸編機の製編条件と編布の物理的特性との関係式を,原糸の種類を追加してデータベース化することである.検討項目は,(1)原糸の種類を変更して供給糸張力,編立速度,巻取張力,度目などが編目密度と見かけ糸太さにおよぼす影響を調査することと,(2)関係式をデータベース化することである. 研究を遂行する上で課題となりそうな点は,丸編機の製編条件と編布の物理的特性との関係の検討である.ベージュ系タイツ類(丸平編物)に使用される原糸類は弾性特性や糸構造が様々であるために,編布の物理的特性への影響も複雑であり,様々に異なることが予想されるからである.この点については,丸編機の製編条件を,明度差分布に特に強く影響を及ぼすものに限定して単純化することによって解決を図る.
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Causes of Carryover |
平成27年度の使用額については,当初予期していなかった問題点(被写体とカメラとの撮影距離の画像明度への影響が予想していたよりも大きかったこと)のために購入物品や購入時期に変更はあったが,おおむね計画通りに使用した.使用予定額との差額は,予期していなかった問題点に対応するために急遽研究室保有の物品を代用したために生じたものである.この代用品は本研究で使用している装置に適合したものではなく測定データの精度に影響を及ぼしており,差額分は適合物品の購入に使用する計画である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,代用品(研究室保有の物品)に代わる適合物品の購入,平成28年度の研究計画で使用予定の物品の購入,ならびに成果報告のための費用として使用する計画である. 平成29年度は,主に被験者への謝金と成果報告のための費用として使用する計画である.
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