2016 Fiscal Year Research-status Report
丸平編物における視覚的審美特性の計測と設計方法に関する研究
Project/Area Number |
15K16179
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若子 倫菜 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30505748)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 編布 / 明度差分布 / 編目密度 / 見かけ糸太さ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,ベージュ系タイツ類(丸平編物,PSと表す)の視覚的審美特性を計測,設計する方法の確立である.そのために,①「素肌脚部らしさ」と関係している明度差分布と編布の物理的特性との関係,②編布の物理的特性と編機の製編条件との関係を明らかにすることが課題である. 平成28年度は,H27年度に得られたシングルカバード糸(ポリウレタン製コア糸にナイロン製カバリング糸を1重に巻付けた糸)製のPS試料に関する明度差分布算出式について,原料糸の種類を追加してデータベースを構築すること,ならびに,編機の製編条件と編布の物理的特性との関係を調査することに取組んだ. コンジュゲート糸,捲縮加工糸,ダブルカバード糸(ポリウレタン製コア糸にナイロン製カバリング糸を2重に巻付けた糸),ナイロン・フィラメント糸を原料とする4種類のPSを実験試料として物理的特性値(着装状態での見かけ糸太さ,コース密度等)を測定し,データを蓄積した.なお,測定した物理的特性値を用いて算出した明度差分布と,従来の方法(着装脚部の明度画像と素肌脚部の明度画像との2画像から求める方法)で得た明度差分布とを比較した結果,特徴の類似した計算結果が得られており,2種類の明度差分布画像を見比べてみても,類似した分布画像が得られていることが認められた. また,ナイロン・フィラメント糸を原料として,編機の製編条件(製編速度,巻取荷重,度目:編み針の昇降距離)と編布の物理的特性値との対応関係を調査した.編目密度には度目が影響をおよぼし,見かけ糸太さには製編条件はほとんど影響をおよぼさないことがわかった.編目密度において,ウェール密度は編機のゲージ数によって一定値になるが,コース密度はPSレッグ部の総コース数によって変わる.したがって,度目などによるコース密度の調整が明度差分布の有効な設計要素であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,ベージュ系タイツ類(PS)の視覚的審美特性を計測,設計する方法の確立である.そのために,①「素肌脚部らしさ」と関係している明度差分布と編布の物理的特性との関係,②編布の物理的特性と編機の製編条件との関係を明らかにすることが課題である.平成28年度の研究計画では2つの検討項目を設定した. 1つ目は,H27年度に得られたシングルカバード糸製のPS試料に関する明度差分布算出式について,原料糸の種類を追加してデータベースを構築することである.コンジュゲート糸,捲縮加工糸,ダブルカバード糸,ナイロン・フィラメント糸を原料とする4種類のPSを実験試料として,伸長状態の異なる編布試料を作成した.各編布試料の編目密度と見かけ糸太さを,編布画像の解析によって測定した.また,明度の異なる5種類の疑似素肌脚部試料を作成して編布試料と組合せた疑似着装脚部を再現し,その画像から糸領域明度と素肌脚部明度とを計測した.両明度値の回帰分析から各原料糸の光学特性値を得た.これらの物理的特性値を用いて明度差分布を計算し,従来方法で得た明度差分布と比較した結果,特徴の類似した明度差分布画像が得られていることがわかった. 2つ目は,編機の製編条件と編布の物理的特性との関係を調査することである.ナイロン・フィラメント糸を原料として,編機の製編条件(製編速度:30,90rpm,巻取荷重100,200gf,度目:1,4)をそれぞれに変化させた編布試料を作製した.編布画像の解析により物理的特性値(伸長状態での見かけ糸太さ,編目密度)を測定し,製編条件との対応関係を調査した.その結果,編目密度には度目が影響をおよぼし,見かけ糸太さには製編条件はほとんど影響をおよぼさないことがわかった. 平成28年度に計画していた全ての項目を順調に達成することができたため,「おおむね順調に進展している」ものと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究課題は,平成28年度の検討によって得られた丸編機の製編条件と編布の物理的特性との関係を,原料糸の種類を追加してデータベース化することである.本課題に対して2つの検討項目を計画している. 1つ目は,原料糸の種類を変更して編立速度,巻取張力,度目などが編目密度と見かけ糸太さにおよぼす影響を調査することである.原料糸の種類は捲縮加工糸,シングルカバード糸の2種類とする.これらの糸種は現行の市販PSに使用されている糸特性を代表するものである.製編条件は,各糸種において編地不良などの不具合なく製編できる低速度・低荷重から高速度・高荷重の範囲における2条件以上とする. 2つ目は,丸編機の製編条件と編布の物理的特性との関係をデータベース化することである. 研究を遂行する上で課題となりそうな点は,丸編機の製編条件と編布の物理的特性との関係の検討である.ベージュ系タイツ類に使用される原料糸は,弾性特性や糸構造が多様であるために,編布の物理的特性への影響も複雑であり,様々に異なることが予想されるためである.この点については,丸編機の製編条件を,明度差分布に特に強く影響をおよぼすものに限定して単純化することによって解決を図る.
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Causes of Carryover |
平成28年度の使用予定は,平成27年度に発生した予期していなかった問題点(被写体とカメラとの撮影距離の画像明度への影響が予想していたよりも大きかったこと)を解決するための専用物品の購入,研究発表のための費用とその他(公設試験研究機関での機器使用料や官能評価実験のための予備実験の謝金)としていた.使用予定額との差額は,機器使用や予備実験に要した時間が,研究室に所属する学生の協力によって大幅に短縮されたために生じたものである.また,専用物品の購入において,既製品の購入だけではなく,素材の購入と自作したことも差額を生じさせた.しかし,おおむね予定していた通りに使用した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は官能評価実験のための被験者への謝金と成果報告(学会発表、論文投稿など)に使用する計画である.これに加えて,自作装置の動作が不安定なところがあるため,その補修のための使用を予定している.いずれも計画どおりに使用する予定である.
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