2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 美輪 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (20721674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食料品アクセス / 食生活 / 栄養素摂取量 / 中高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の調査では農村部と郊外の地域住民に対して買い物苦労の有無と栄養素摂取量との関連を調べることを目的に調査を行った。平成28年度では都市郊外の団地内の住民に対して食料品アクセスや食生活について調査を行った。団地内は最寄り駅から約2kmに位置し、公共バスの運行によって交通の便はある程度保たれた地域であるが、丘陵地のため高齢者にとっては長距離歩行には身体的負担がかかる場所である。団地内に食料品スーパーが唯一ひとつあったが平成28年8月末に閉店し、約2か月後の11月に新規食料品スーパーが開店した。これを自然実験として、食料品スーパーの閉店後と新規開店後の2回にわたって調査を行った。現在データの分析を開始しており、今年度までに分析結果を発表予定である。一方で平成27年度に行った調査データをさらに分析して以下の結果を得た。対象者を40歳以上の中高齢者とし、主観的な買い物の苦労と栄養素摂取量、エネルギーバランスとの関連について分析した。その結果、共変量調整後の分析で男性の買い物の苦労がある者において、買い物苦労がない者と比較して1日の脂質摂取量とエネルギー比が有意に低く、炭水化物エネルギー比が有意に高かった。炭水化物摂取量を食品レベルで調べると、男性の買い物の苦労がある者における米飯の摂取量が、買い物苦労がない者と比較して高かったことが明らかになった。コメは保存性に優れ、衛生管理がしやすく、また調理が容易であるため、食料品が入手しにくい者でも手に入りやすいことが買い物苦労ありの米飯摂取量が高い一つの要因と考えられる。さらに買い物苦労と健康指標との関連を調べたところ、男女とも買い物苦労ありの主観的健康感が悪い割合は買い物苦労なしよりも高かった。これらの結果より、今後食生活を介した食料品アクセスと健康との関連を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は都市郊外の団地内に住む住民において食料品アクセスと食生活についての調査を団地内の食料品店舗閉店後、新規開店後の2回行った。平成27年度の調査をさらに分析したところ、中高齢層の男性において主観的な買い物の苦労の有無と脂質摂取量、または脂質と炭水化物のエネルギーバランスとの間に関連が見られた。平成28年度調査としておおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、論文作成、学会発表を重点として研究を行う。老年学的大規模コホート研究のデータを用いて地理情報システムから算出した食料品アクセスの距離を推定し、肉魚、野菜摂取頻度との関連を分析する。本研究を引き続き行うために、平成27年度から行う住民調査についても施行、分析、評価を継続して行う。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ予算内の研究費で調査研究を行うことができた。残額は翌年度の予算として本年度へまわすことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿のための英文校正代、平成29年度調査のための調査票印刷代などの費用に使用する。
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