2016 Fiscal Year Research-status Report
茅資源の伝統的利用技術に着目した持続的建築生産のトレーニングプログラムの実践
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15K16182
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
釜床 美也子 香川大学, 工学部, 助教 (00635948)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 茅 / 伝統構法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年4月1日~平成29年3月31日の間、産休・育休の取得に伴い職場を休職したため、平成28年度は全期間において対外的な研究活動を行うことはできなかった。そのため、研究計画のうち「(A)調査研究」については、平成27年度までに現地調査を終えていた徳島県貞光家賀道上・高知県梼原町上本村・香川県小豆島肥土山の集落調査、および、大分県別府市の湯の花小屋・兵庫県三田市のウド小屋の調査、の解析を進めるのに留まり、新たな調査はできなかった。「(B)プログラムの実践」については、平成28年9月から実施を予定していたが、これも平成28年度は実施を見合わせた。 大分県別府市の湯の花小屋は、適度な排湿と保温性を必要とする特別な小屋であったため現在まで茅葺きが維持されていた。その逆葺きの稲藁の屋根は、茅と稲藁を使い分けてその性能要求を満たすという特徴があった。下地は150mm程の厚い茅の層(ハダガヤ)を断熱層とし、表面の屋根葺き材に雨仕舞のよい逆葺きの稲藁(ホコ)を用いていた。20年は持つという下地の茅の層(ハダガヤ)は交換せず、耐久性には劣るが薄くても雨仕舞のいい表面の逆葺きの稲藁(ホコ)だけを3年で更新するという維持管理を行っていた。茅と藁を組み合わせることで、葺き替えの手間と材料の節約が可能になっていた。 兵庫県三田市のウド小屋は、稲藁を逆葺きにした屋根で、葺き厚がわずか45mm程度で、最も薄い部類の茅葺きとみられた。屋根は稲藁の苫1層で、棟も含めすべての固定法は稲藁数本でねじって留めるという素朴な構法であった。小屋組に垂木はなく、屋根・壁共に桟に苫を留めただけの「吊る」ともいえる共通の構法でつくられていた。調査を行ったA家の場合、苫は解体後に部分補修をすることで5~6年まで繰り返し使用され、内部で使われたソクワラやタバワラと共に保管され、最後はすべて堆肥化されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年4月1日~平成29年3月31日の間、産休・育休の取得に伴い職場を休職したため、平成28年度は現地調査やプログラムの運営といった研究活動を行うことはできなかった。そのため、平成27年度までに行った現地調査の解析を中心に研究を行なった。本研究の成果を担保する上で、研究計画に記載した現地調査や茅資源を利用するプログラムの運営という研究方法の変更はできないため、平成28年度と平成29年度に予定していた現地調査やプログラムの運営は、平成29年度の1年間で実施できるものに変更する。平成27年度の調査は順調であったため、研究期間全体で総合的に判断し、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、平成28年度と平成29年度に予定していた現地調査やプログラムの運営は、平成29年度の1年間で実施できるものに変更する。大きくは、下記の点を変更する。 (1)簡易工作物については全国的な調査を行う予定であったが、調査対象地を四国近隣中心に変更する。本研究を開始した後、四国近隣でも様々な簡易工作物の構法が残存していることが分かったため、構法のバリエーションについては十分示し得ると考えた。調査対象地を近隣にし、ある程度限定することで、調査の移動時間の節約と文献収集の省力化を図り、分析に足る調査事例の集積を優先させる。 (2)茅資源を利用するプログラムは平成28年9月の開始を想定していたが、平成28年度は実施ができなかったため、平成27年度までにストックした茅を使用することで、平成29年の夏季にプログラムを開始する。プログラムは平成30年3月まで行い、分析や評価は並行して進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度は全期間産休・育休を取得したため現地調査やプログラムの実施ができなかったことから、平成27年度までに行った調査のGIS等を用いたまとめや解析を行った。そのため、支出はソフトの維持費のみとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度と平成29年度の2年間で実施予定だった現地調査やプログラムの運営を1年で行うことから、平成28年度にはなかった旅費や人件費の支出が増大すると見込んでいる。また、平成27年度の研究実施状況報告書に記載した通り、プログラムの運営に関わる消耗品の支出が見込まれる。
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