2015 Fiscal Year Research-status Report
軟化海藻類の分子調理学的変化の解析とメタボリック症候群の発生制御機構
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15K16187
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山岸 あづみ 山形大学, 教育文化学部, 助教 (00400531)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆布 / ひじき / 調理加工 / 軟化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本実験は乾燥昆布およびひじきを試料として用いた。乾燥昆布は出汁および佃煮作成法で調理加工した際の軟化および組織形態の変化を中心に解析を行った。その結果,昆布の残存率は佃煮風昆布では90%であったのに対し,だし昆布では20分加熱,1時間加熱,2時間加熱では佃煮風昆布の約半分であった。破断強度は出汁昆布の1時間や2時間加熱は,20分加熱に比べて有意に軟化した。水中沈定体積の結果は,佃煮風昆布が乾燥昆布と同程度であったのに対し,出汁昆布の2時間加熱は約4倍に増加した。佃煮風昆布と出汁昆布の20分加熱の煮沸時間は同定度であるが,調理法の違いにより残存率や破断強度,水中沈定体積の値が異なったことから,佃煮風昆布は煮沸により溶液中に流出した成分が煮詰めることによって再度昆布表面に付着し,出汁昆布の20分加熱とは異なる組織・組成になったことが推察された。 乾燥ひじきはシュウ酸NaやEDTA2Na溶液で煮沸し,軟化機構について検証を行った。その結果,先行研究で行った乾燥昆布と同様にひじきでもシュウ酸Na溶液で煮沸すると一定濃度までは軟化するが,それ以降は溶液の濃度が濃くなると硬くなる傾向が確認できた。また,溶液中のCa量はシュウ酸Na溶液の濃度が濃くなるにつれて減少する傾向であった。一方,EDTA 2Na溶液で煮沸したひじきは,濃度依存的に軟化が亢進し,軟化したひじきの溶液中ほどアルギン酸やCa量が増加した。 ヒトが乾燥海藻類を摂取するには調理加工する必要があることから,本実験で得られた結果は次年度以降に予定している調理加工海藻類のメタボリック症候群の発生制御機構を解明するためにも意義がある内容であり,人間栄養学の観点から調理加工海藻類の機能性を調理学から栄養学まで一貫して明らかにするためにも重要なデータとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾燥昆布では食生活で行われている出汁および佃煮の作成法で乾燥昆布を調理加工し,その際の軟化度と食物繊維や組織形態の変化を確認することができた。また,乾燥ひじきではシュウ酸NaやEDTA2Naによる軟化機構を明らかにすることができた。当初HPLCを用いて乾燥海藻類を煮沸した際の溶液中に溶出した食物繊維の分子量を測定し,軟化による食物繊維の分子量の変化を明らかにする予定であった。そこで,予備実験としてアルギン酸をシュウ酸Na溶液で煮沸し,食物繊維の分子量の変化についてHPLCによる分析で試みたが,明確な結果を得ることができなかった。したがって,この点については次年度以降に測定条件を検討して,再度検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は異なる加工調理法で調理した乾燥昆布,わかめ,ひじきを食餌性肥満モデルマウスに摂取させ,調理加工した乾燥海藻類によるメタボリック症候群への抑制効果の有無とその制御機構について明らかにする予定である。動物実験で得られたデータを今年度得られた乾燥海藻類の調理加工による変化の結果と照合して解析することにより,調理加工海藻類のメタボリック症候群の発生制御機構に対するキーポイントとなる点を探索し,同定したいと考えている。さらに,海藻類に含まれる機能性成分であるフコキサンチン,マンニトール,グルタミン酸Naを食餌性肥満モデルマウスに摂取させ,メタボリック症候群に対する機能性発現の違いについても検証する予定である。これらの動物実験と並行して,平成27年度に明らかにすることができなかったシュウ酸Naで煮沸した際の溶液中および昆布中の食物繊維の分子量の変化についても,引き続き実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初,今年度予算額で凍結乾燥機の購入を予定していたが,学内の共通機器として使用できるようになったため,今年度は購入しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後行う動物実験では飼育するマウスの数も多く,実験結果によっては追加実験や分析を外部委託する必要性も生じるため,平成27年度で使用しなかった研究費は,平成28年度以降の動物実験の分析費用等で使用する予定である。
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