2016 Fiscal Year Research-status Report
軟化海藻類の分子調理学的変化の解析とメタボリック症候群の発生制御機構
Project/Area Number |
15K16187
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山岸 あづみ 山形大学, 地域教育文化学部, 助教 (00400531)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 昆布 / 調理加工 / メタボリックシンドローム関連指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、出汁や調理に利用される日高昆布や強い粘りを有するフコイダンを多く含むガゴメ昆布を水煮したもの、昆布を酢で軟らかくした後に薄切したとろろ昆布、水煮ひじきを食物繊維が5%になるように高脂肪食に添加した飼料を食餌誘発性肥満モデルマウスに摂取させ、含有する多糖類や摂取形態が異なる昆布および昆布と同じ褐藻類であるひじきによるメタボリックシンドローム関連指標への影響を検証することを目的とした。 その結果、5%セルロースを添加したコントロール群に比べて、すべての試験群の体重増加が有意に抑制されていることが確認できた。内臓脂肪蓄積量はコントロール群に比べて、日高昆布群、とろろこんぶ群、ひじき群のみ有意に蓄積が抑制された。血清生化学検査ではとろろ昆布群のみコントロール群に比べて有意にコレステロール値が低下し、耐糖能試試験においても、とろろ昆布群のみ有意に血糖が低下した。飼料摂取量から海藻類に含まれる食物繊維の一種であるアルギン酸摂取量を求めた結果、日高昆布摂取群は他の試験群に比べて有意にアルギン酸摂取量が多いことが確認できた。以上の結果から、1)海藻類を食物繊維源として5%摂取すると体重増加が抑制されることが示唆され、2)とろろ昆布のように形態が変化した昆布は水煮しただけの昆布に比べてメタボリックシンドローム関連指標改善作用が強い可能性が考えられ、3)昆布によるメタボリック関連指標改善作用には昆布中のアルギン酸の量ではなく、消化管におけるアルギン酸の流出のしやすさが関与している可能性が推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施した含有する多糖類や摂取形態が異なる昆布および昆布と同じ褐藻類であるひじきによるメタボリックシンドローム関連指標への影響に関する実験において、メタボリックシンドローム関連指標の改善作用を有することが確認できた試料については、現在その作用機作を検証している。また、平成29年度に実施する予定である、昆布に含まれるカロテノイド系色素であるフコキサンチンを除去した試料を用いた実験の飼料作成も開始していることから、実験はおおむね順調に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
昆布にはアルギン酸以外にも、機能性成分としてフコキサンチンが含まれる。フコキサンチンはカロテノイド系色素の一種であり、内臓脂肪蓄積抑制、血糖上昇抑制作用や脂質代謝改善作用を有することが報告されている。また、先行研究で出汁浸出物はメタボリックシンドローム関連指標の改善作用が強いことが示唆され、出汁浸出物中にはグルタミン酸が多く含まれていたことから、グルタミン酸も昆布摂取による機能性発現に寄与している可能性が考えられる。そこで、今後は調理加工した昆布のアルギン酸を中心とした食物繊維による機能性発現のキーポイントを明らかにするために、脱フコキサンチン処理した昆布やグルタミン酸を食餌誘発性肥満モデルマウスに摂取させ、脱フコキサンチン処理を行っていない軟化昆布摂取時との機能性発現の差異について検証する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に凍結乾燥器の購入を予定していたが、学内の機器が使用できることになり購入しなかったため、今年度は初年度からの繰り越し金額が多く、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に繰り越す研究費は、外部委託する予定である動物実験で使用する試料の機能性成分の分析費や動物実験で必要性が生じた生体試料の分析費用に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)