2015 Fiscal Year Research-status Report
再凍結された冷凍すり身の有効利用および再凍結によるゲル形成能劣化抑制に関する研究
Project/Area Number |
15K16194
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
阿部 周司 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (60733657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 冷凍すり身 / ゲル / 再凍結 / 物性 / Ca-ATPase |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度当初は再凍結が冷凍すり身のゲル形成に及ぼす影響について、 陸上2級すり身(低級品)およびSA級(高級品)の2つの等級において本研究を進めていく予定であった。しかし、本研究に興味を示した大手水産会社からSA級冷凍すり身2ブランド、A級(中級品)冷凍すり身2ブランド、計4ブランドの冷凍すり身が提供されたことから、より研究に厚みが増すことになった(陸上2級を含めて計5ブランド)。冷凍すり身の提供に伴い、平成27年度は3つの等級(陸上2級、SA級、A級)それぞれ1ブランドについて、物性測定、ゲル中のタンパク質間の結合種の推定および再凍結された冷凍すり身のCa-ATPase活性の測定を行った。大手水産会社の協力により、実施する研究に厚みが増した一方で、検討すべき試料が増えたため、研究の進捗速度の遅れが懸念されている。平成28年度は残りの2ブランドについて物性測定、ゲル中のタンパク質間の結合種の推定および再凍結された冷凍すり身のCa-ATPase活性の測定を引き続き実行する。それに伴い進捗速度を上げるため、研究に協力してもらう学生の人数を増やすことを予定している。 また、再凍結された冷凍すり身に対する物性改良剤の効果については平成28年度に実施する予定であったが、平成27年度に卵白と澱粉の添加に関する検討を一部行うことができた。 以上の研究成果について、物性改良材に関する研究内容は平成27年5月31日に開催された「第60回低温生物工学会セミナー及び年会」で発表を行った。また、再凍結された冷凍すり身のゲル形成能劣化試験に関する研究成果の一部は「平成27年度宮城県水産練り研究会第一回研修会(招待講演)」で発表し、検討した冷凍すり身のブランド数の追加およびCa-ATPase測定の結果に関する内容は平成28年6月に開催される「第61回低温生物工学会セミナー及び年会」で発表をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大手水産会社の協力により、検討することのできる等級およびブランド数が増えたことで研究内容の厚みが増したことは歓迎すべき点である。4ブランドの冷凍すり身が提供されたことによって、陸上2級すり身を含めて計5ブランドの検討となった。これによって当初の予定より単純計算で2.5倍の時間を本検討に要することになり、平成27年度に予定していた残り2ブランドについての実験は平成28年度に行うことになった。これは「研究の進捗」という面においてはややマイナス評価と考える。しかしながら、平成27年度に5ブランド中3ブランドの冷凍すり身について物性測定、ゲル中のタンパク質の結合種の推定およびCa-ATPase活性の測定から再凍結された冷凍すり身のゲル形成能劣化試験の検討を行えたこと(当初は2つの等級、2ブランドであった)、また、平成28年度に予定していた再凍結された冷凍すり身に対する物性改良剤の効果の一部について検討できた。 当初予期していない産業界からの反響があり、当初の研究計画から良い意味で若干の変更が生じたものの、本研究課題は全体的に概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
大手水産会社が本研究に協力してくれたことは、本研究が水産業界にとって有益な研究であると認識されていることを意味していると思われる。そのため、本研究成果がより産業界に広められるよう、研究の進捗はもちろん、アウトリーチ活動にも力を入れていきたいと考えている。ただし、大手水産会社の協力により検討すべき試料が増加したため研究の進捗速度が遅れることが懸念されることから、当初予定した人数よりも多めに研究室の学生に研究の遂行を協力してもらうよう要請する必要がある。 また、平成27年度は雑誌の掲載がなかったが、研究の進捗自体は概ね良好であったため、平成28年度はこれまでに得られた研究成果から論文を2報程度は発表をする予定である。
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Causes of Carryover |
申請当初は冷凍すり身の購入費を計上していたが、大手水産会社から冷凍すり身が提供されたため、物品費における冷凍すり身購入費が想定した額より下回った。また、大学内の研究費で冷凍庫等の備品が整備され、それに伴い遠心機を購入できるようになった等、物品費については当初の予定した研究経費計画から大きな変更が生じた。学会参加およびその旅費等で3万円を見積もっていたが、研究発表を所属している大学で行われる学会での発表にしたため、旅費が想定よりも少なかった(招待講演については旅費が支給されたため、科研費からの請求を行わなかった)。さらに、謝金およびその他の支出項目についても本年度は支払うべき項目が予定よりかなり少なかった。 以上の研究経費計画の変更伴い、わずかではあるが次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は\583とわずかであるため、来年度の使用については大きな変更点はない。ただし、マルトトリオースの価格を当初の計画では¥50000/10gと見積もっていたが、価格が改定されたためか平成27年度は\37908/10gであったため、マルトトリオースの購入費が計画を下回る可能性がある。その場合、必要に応じて行う予定であったSDS-PAGEによる分析を積極的に行う方向で考え、それにマルトトリオースの購入費で変更が見込まれる予算を充てることを考えている。
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[Presentation] 冷凍すり身の科学と応用2015
Author(s)
阿部周司
Organizer
平成27年度宮城県水産練り研究会第一回研修会
Place of Presentation
宮城県小田急仙台ビル3階(宮城県仙台市青葉区)
Year and Date
2015-11-18
Invited
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