2015 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスを介した食事性脂肪肝の発症メカニズム:新規脂肪酸センサー分子の同定
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15K16208
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
安倍 知紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (00736605)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / Cbl-b / 小胞体ストレス / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食事性脂肪肝の発症機構としてユビキチンリガーゼCbl-bによる小胞体ストレス抑制の破綻が関わることを明らかにすることを目的としている。これにより、食事性脂肪肝に対する新規の予防法・治療法の提案ができると考えている。 2015年度は、脂質代謝の制御に関わると考えられているCbl-bを欠損したマウスの表現型解析を行った。まず、高脂肪食を負荷することによって食事性脂肪肝を誘導したCbl-b遺伝子欠損マウスの肝臓についてさまざまな解析を行った。予備実験で得られた結果と一致して、Cbl-b遺伝子の欠損は食事性脂肪肝を増悪させることを確認した。脂肪肝の増悪には、脂肪合成関連遺伝子(Fas, Scd-1, Ppparg2)の発現増大が関与することも示唆された。 近年、脂肪肝における小胞体ストレスの増大が、脂肪合成関連遺伝子の発現増大を介して脂肪肝発症に関与することが報告されている。そこで小胞体ストレス応答について解析を行うと、Cbl-b遺伝子欠損により小胞体ストレスの指標であるChopおよびXbp-1sの発現量がさらに増大していた。この小胞体ストレスの増大のメカニズムを解明するために、小胞体とミトコンドリアとの結合(MAM)の形成量について検討した。予想に反して、小胞体ストレスと反比例すると考えていたMAM形成量は、Cbl-b遺伝子欠損による影響を受けなかった。この結果と一致して、培養細胞を用いた実験からもCbl-bはMAM形成量に影響を与えないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、マウス個体を用いた動物実験はほぼ完了している。具体的には、Cbl-b遺伝子欠損マウスにおいて、小胞体ストレスの増大が食事性脂肪肝の発症にかかわることを示唆するデータを得たことである。 培養細胞を用いた実験についても、予想していた結果とは異なってはいたものの、予定していた解析は全て実施することができた。予想と異なっていた点(Cbl-bが、小胞体ストレス応答に関わるMAM形成に影響を与えなかった)については、Cbl-bが直接的に小胞体ストレス応答に関わるという仮説を立て、培養細胞を用いて検討している。当初の計画通り、この培養細胞を用いた実験は2016年度も行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、2015年度に引き続いてCbl-bによる小胞体ストレス抑制のメカニズムおよび肥満により増大する血中脂肪酸濃度によるCbl-bタンパク質量への影響について解析を行う。 Cbl-bによる小胞体ストレス応答制御については、当初の計画に加えて、Cbl-bによる直接的な小胞体ストレス応答制御機構について解析を行う。具体的には、小胞体ストレス応答にはいくつかのキナーゼが重要であるが、Cbl-bはリン酸化シグナル伝達を負に調節する酵素でもあるので、小胞体ストレス応答に関わるJNKなどのリン酸化レベルについて網羅的に解析を行う。変化があったキナーゼについては、そのメカニズムまで解析を行う予定である。 血中脂肪酸濃度の増大によるCbl-bタンパク質量への影響に関する解析については、当初の予定通り2016年度より新たに着手する。解析には、マウス肝臓由来の初代培養肝細胞や培養細胞株を用いる。解析方法としては、これらの肝細胞に血中に豊富に存在する長鎖の飽和または不飽和脂肪酸を添加し、Cbl-bのタンパク質量を解析する。さらには、脂肪酸添加により活性化するシグナル伝達も同定する。
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Causes of Carryover |
2015年度にメタボロ―ム解析を行う予定であったが、実施しなかったために計上した費用を次年度に繰り越すこととした。メタボロ―ム解析を行わなかった理由は、遺伝子発現解析により小胞体ストレス増大による脂肪合成関連遺伝子発現増大が明らかとなったため、行う必要がなくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、当初予定していなかったCbl-bによる小胞体ストレスに関わるキナーゼの活性化調節機構を明らかにする実験が追加される予定である。したがって、メタボロ―ム解析に計上していた分をキナーゼ活性の検討に必要である抗体や細胞培養の費用に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Capric acid up-regulates UCP3 expression without PDK4 induction in mouse C2C12 myotubes2016
Author(s)
Tomoki Abe, Katsuya Hirasaka, Shohei Kohno, Chisato Tomida, Marie Haruna, Takayuki Uchida, Ayako Ohno, Motoko Oarada, Shigetada Teshima-Kondo, Yuushi Okumura, Inho Choi, Toshiaki Aoyama, Junji Terao, Takeshi Nikawa
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Journal Title
Journal of Nutritional Science and Vitaminology
Volume: 62
Pages: 32-39
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant