2016 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスを介した食事性脂肪肝の発症メカニズム:新規脂肪酸センサー分子の同定
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15K16208
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
安倍 知紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (00736605)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / Cbl-b / ミトコンドリア / 小胞体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、メタボリックシンドロームに伴って発症する、食事性脂肪肝が注目されている。それは、脂肪肝を放置すると肝臓の線維化や肝がんにまで進展するリスクがあるからである。本研究は、食事性脂肪肝の発症メカニズムを分子レベルで解明し、予防や治療法開発のための基礎研究である。 平成27年度の研究により、ユビキチンリガーゼCbl-bが食事性脂肪肝の発症を抑制することが明らかになった。その分子メカニズムを明らかにするために、平成28年度は、前年度に引き続きユビキチンリガーゼCbl-bによるミトコンドリア-小胞体連関調節を検討した。マウスから単離した初代培養肝細胞を用いて解析を行った。しかしながら、Cbl-bによる直接的なミトコンドリア-小胞体連関調節は再現性が得られず、関与していないという結論に至った。 さらなる分子メカニズム解明のために、マウス肝細胞由来細胞株AML12細胞を用いて実験を行った。食事性脂肪肝の原因として、飽和脂肪酸が肝細胞内に増加することが知られている。そこで、AML12細胞に飽和脂肪酸の1つであるパルミチン酸を添加し解析を行った。パルミチン酸添加により、AML12細胞においてユビキチンリガーゼCbl-bの発現量が増大することを見出した。一方で、Cbl-bはプロテアソーム依存的な分解を受けるために、タンパク質レベルでは減少した。次に、Cbl-b分解におけるPKCθの意義を検討した。免疫細胞においては、PKCθがCbl-b分解を仲介することが知られている。しかしながら、PKCθを阻害してみてもCbl-bのタンパク質分解には変化が認められなかった。このことから、肝細胞においては免疫細胞とは異なるCbl-b分解機構が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
培養細胞を用いた実験に関しては、概ね計画通りに遂行することができたと考えている。しかしながら、Cbl-b遺伝子欠損マウスを用いた実験を予定通り終えることができなかった。それは、動物飼育の設備等に不備がないにも関わらず、Cbl-b遺伝子欠損マウスの産仔数が激減し、実験遂行に必要なマウス数を準備できなかったからである。そのため、本研究課題の進捗状況を遅れていると判断した。このような状況であるため、本研究課題の期間を1年延長申請して、Cbl-b遺伝子欠損マウスを用いた実験を完了させることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
Cbl-b遺伝子欠損マウスにおける食事性脂肪肝の病態解析を仕上げる。もし、Cbl-b遺伝子欠損マウスの産仔数が引き続き少ない場合には、野生型マウスにCbl-bノックダウンを施して代用する。 また、Cbl-b遺伝子欠損マウスから初代培養肝細胞を単離し、以下の解析を行う。 (1)ミトコンドリア-小胞体連関数のカウント (2)パルミチン酸添加によるCbl-b分解の分子メカニズム こちらおいても、Cbl-b遺伝子欠損マウスの確保が難しい場合には、効率が非常に悪くなるがCbl-b遺伝子のノックダウンで代用することも考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた研究計画が遂行できなかったためである。実験に必要なCbl-b遺伝子欠損マウスの産仔数が激減し、それにかかわる実験が全く行えなかった。それに必要な試薬等の購入ができなかったために、次年度使用額が生じた。また、研究計画が完了していないために論文発表ができていないため、それに必要な経費は次年度に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Cbl-b遺伝子欠損マウスにおける食事性脂肪肝の病態評価のため、生化学的検査キット、肝臓切片染色試薬、抗体、リアルタイムPCR試薬の購入に充てる。また、初代培養肝細胞の実験においては、抗体、蛍光試薬の購入に充てる。最終的には英語論文として発表する予定であるため、論文の英語校正、国際誌での掲載料、別刷費として使用予定である。
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Research Products
(1 results)