2016 Fiscal Year Research-status Report
シアリルラクトースの摂取による記憶学習能の維持・改善メカニズム解明に関する研究
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15K16221
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
山田 貴史 中部大学, 応用生物学部, 講師 (50531860)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シアリルラクトース / 栄養学 / 記憶学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
シアリルラクトース(SL)は、N-アセチルノイラミン酸を主としたシアル酸にラクトースが結合した物質で、乳製品に含まれる。シアル酸を含む様々な糖鎖は細胞膜表面上のシグナル伝達を調整しており、脳神経伝達においても重要な働きをしている。そこで本研究課題では、シアリルラクトースを栄養学的に摂取する事による高次脳機能への影響、得に記憶学習能への影響を観察する事を目的とした。本年度は、記憶学習能低下モデル動物である加齢促進SAMP8マウスを用い、シアリルラクトースの摂取が記憶学習能に及ぼす影響を観察した。2週間シアリルラクトースを摂取させたSAMP8マウスを用い、記憶学習行動試験である新規物質探索試験を実施した。実験では、通常食を摂取した健常加齢SAMR1マウス群、通常食を摂取したSAMP8マウス群、および1%のシアリルラクトースを含む食餌を摂取したSAMP8マウス群の3群を設けた。その結果、健常対照群として用いたSAMR1マウス群に比べ、通常食を摂取したSAMP8マウスでは新規物質探索試験のスコアが有意に低下し、記憶学習能が低下する事を示した。一方で、シアリルラクトースを含む食餌を摂取したSAMP8マウス群では、SAMR1群と同等の行動試験スコアを示した。これらの結果から、シアリルラクトースの摂取は、記憶学習能の低下を抑制する可能性が示された。今後の研究では、行動試験で用いた動物から摘出した脳を用いて、シアリルラクトースの記憶学習能低下抑制に関連する因子の測定を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度までに、記憶学習能低下モデル動物を用いた記憶学学習行動試験を実施する事で、シアリルラクトースの摂取が、記憶学習能の低下を抑制する可能性を示すことができたが、そのメカニズムについては明らかではない。行動実験で使用した動物から採取した脳組織を保有しているので、それらの脳組織中の記憶学習に関連する因子について解析を行う必要がある。また、当初予定していた脳内ガングリオシドの解析については、測定方法の確立に必要な時間および予算の確保が困難であるため、これにかわり、神経栄養因子発現量の測定や、神経伝達物質量の測定に重点をおき、詳細な分析を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在保有している、動物の脳組織サンプルを用い、記憶学習能に関連する因子の変化について、タンパク質発現あるいは遺伝子発現の変化を分析する予定である。
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Causes of Carryover |
生化学分析において、特に遺伝子解析装置の交換の必要性があり、その交換期間および装置の測定手技の取得期間が必要となったため、一部の測定項目について遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の実験計画に沿って、新しく導入した機器を用い、遺伝子解析等の生化学分析を実施する。
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