2015 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌進展を負に制御するコレステロール酸化代謝物のメカニズムの解明
Project/Area Number |
15K16224
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
田中 亜路 安田女子大学, 家政学部, 講師 (60509040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コレステロール / アノイキス / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
血球系以外の通常細胞は、生存・増殖のために「足場」を必要とし、足場が失われた場合にはアポトーシス(アノイキスと呼称)をおこす。一方、ほとんどの癌細胞ではアノイキスは強く抑制されている。この「癌細胞の足場非依存的増殖」のメカニズムは現時点でも不明な点が多いが、その性質上、細胞接着や細胞骨格に着目した研究が行われている状況である。研究担当者は、大腸癌細胞株DLD-1の強制浮遊培養系を用いたスクリーニングにより、生理活性物質である25-hydroxycholesterol(25-HC)がアノイキスを誘導すること、しかし、接着状態のDLD-1細胞にはアポトーシスを誘導しないことを見出している。本研究で25-HCの標的分子を同定することを主要な目的とし、その後の展開として、同定した分子を足掛かりに「癌細胞の足場非依存的増殖」メカニズムあるいは「癌細胞のアノイキス抵抗性獲得」メカニズムの解明を目指す。で25-HCの標的分子を同定するために、25-HCの分子骨格を維持したさまざまな分子ライブラリを構築し、それらに対してスクリーニング系を活用しつつ、標的タンパク質の釣り針に足る分子の探索・獲得を目指している。本年度においては、7-Keto-3,25-dihydoroxycholesterolという有望候補分子の同定に成功したため、引き続き研究計画の継続を進める。また、このスクリーニングの過程で、25-HCの3位に硫酸基を導入した25-HC-3-sulfateが25-HCと全く逆に、浮遊培養大腸癌細胞株DLD-1の増殖を加速させることを見出した。この発見は、酸化ステロール代謝ネットワーク環境が癌の悪性度に影響を与えることを示唆するものであり、余裕のある範囲で、検討を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のように目的分子の同定までには至っていないが、その前段階でもっとも困難が予想されていた「アノイキス活性を保持するリンカー導入25-HC」の作成に目処が立ち、「当初計画のように進まない場合の対策」に記載していた事項を実施する必要がなくなったと想定される点を最も自己評価している。また副次的に、生体内の酸化コレステロール代謝ネットワーク環境と癌の悪性度の関連を示唆するような知見が得られたことも大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに進める。具体的には、「リンカー導入25-HC」およびアビジン・ビーズなどのビーズを用いたプルダウン実験、二次元でのタンパク質電気泳動と銀染色法により、興味あるシグナルを決定し、候補タンパク質を絞りこむ。得られたシグナルについては、配列を決定しる。予備実験ののち、可能性が高いものから順に、遺伝子クローニング、RNAi、ゲノム編集などを駆使してアッセイ系を確立し、目的の25-HCによるアノイキス誘導メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(1 results)