2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌進展を負に制御するコレステロール酸化代謝物のメカニズムの解明
Project/Area Number |
15K16224
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
田中 亜路 安田女子大学, 家政学部, 講師 (60509040)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アノイキス / 酸化コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
血球系以外の通常細胞の多くは、生存・増殖のために「足場」を必要とし、足場が失われた場合にはアポトーシスをおこす。このアポトーシスは特別にアノイキスと呼称されている。一方、ほとんどの癌細胞ではアノイキスは強く抑制されている。この「癌細胞の足場非依存的増殖」のメカニズムは現時点でも不明な点が多いが、その性質上、細胞接着や細胞骨格に着目した研究が行われている。癌の転移は、さまざまなプロセスをクリアした結果に生じてしまう多段階的な現象であるが、この「癌細胞の足場非依存的増殖」は、その最も根本的な条件であるといえる。 本研究では、大腸癌細胞株DLD-1の強制浮遊培養系を用いて、酸化コレステロールの一種である25-hydroxycholesterol(25-HC)がアノイキスを誘導するメカニズムについて、検討をおこなっている。この過程で、25-HCの代謝産物である25-HC-3-sulfateが、大腸癌の足場非依存的増殖を25-HCとは逆に活性化していることを明らかにした。 25-HCアナログを用いた標的タンパク質の探索は、アナログ種と条件の検討を継続しておこなっている。また25-HCこれまでにROCK1がアノイキス誘導におおきな役割を果たしていたことを明らかにしていたが、その直接の上流であるRhoそのものが直接活性化されていることを見出した。この結果は、25-HCが細胞膜-細胞骨格系の情報伝達システムに直接影響を与えうることを示唆するもので、最近報告が相次いでいる25-HCの免疫応答系への役割を理解するための新たな議論の土台となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度より家政学部から薬学部へ異動となったため、事前の準備・対応が必要となり、研究時間の確保に苦慮したため。
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Strategy for Future Research Activity |
薬学部で研究室を立ち上げつつ、当初の研究計画通り、25-HCの標的タンパク質の同定とメカニズムの解明を目指す。このとき、本研究で見出した、大腸癌の足場依存的増殖において25-HCと部分的に拮抗的関係にある25-HC代謝分子である25-HC-3-sulfateについて、対照的な検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
家政学部から薬学部への異動に伴い、実験計画に遅れが出たため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分を、対象年度に使用する予定だった実験器具の購入にあてる
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Research Products
(1 results)