2015 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲン受容体遺伝子多型に基づく大豆製品摂取の認知機能に及ぼす影響の解明
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15K16228
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中本 真理子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (40722533)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大豆 / イソフラボン / 認知機能 / 知能 / 中高年者 / 長期縦断疫学研究 / 栄養疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は食事を介した認知機能の低下予防を目的とし、15年以上実施されてきた地域在住中高年者を対象とした長期縦断疫学調査から、大豆製品・イソフラボン摂取と認知機能との関連について検証するものである。食事量は3日間の食事記録調査から算出し、認知機能は認知機能障害スクリーニング検査(MMSE)を用いて評価した。
本年度は横断的解析を中心に次の1,2の項目について検討した。さらに縦断的解析も開始し、現在3の解析を進めている。1、MMSE得点の違いによる大豆製品等の摂取量の比較:男性では「MMSE27点以下」群に比べて「MMSE28点以上」群で、味噌摂取が有意に多く(p<0.001)、納豆、各イソフラボンの摂取量が有意に低かった(p<0.05)。女性において「MMSE28点以上」群で味噌摂取は有意に多く(p<0.05)、有意ではないが総イソフラボンの平均摂取量が低かった。2、大豆製品等の摂取と認知機能の関連(横断的解析):ロジスティック回帰分析(調整要因:年齢・教育歴)から、各大豆製品・イソフラボン摂取量3分位における「MMSE27点以下」に対するオッズ比を算出したところ、男性で納豆摂取が最も少ないT1群に対しT3群のオッズ比は0.63(p<0.05)、総大豆製品摂取量が最も少ないT1群に対しT2群のオッズ比は0.63(p<0.05)であった。3、総豆類摂取と認知機能の関連(縦断的解析): 第2次から第7次調査まで参加している対象者において、一般化推定方程式を用いて行った解析(調整要因:ベースライン時の年齢、MMSE得点、追跡期間)から、豆類摂取量が1標準偏差分増加する場合の認知機能低下(MMSE23点以下へ低下)に対するオッズ比は0.47であった(p<0.01)。
今後、交絡因子等を考慮した詳細な検討が必要だが、豆類の摂取は認知機能の低下予防に関与する可能性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、中高年者の豆類・大豆製品摂取、ならびに大豆イソフラボン摂取と認知機能との関係について、横断的に検討することを計画していた。 平成27年度に実施した横断的解析から、男女ともに認知機能低群(MMSE27点以下)と高群(MMSE28点以上)とで、大豆製品や大豆イソフラボンの摂取量に違いがみられるかを解析し、豆類や大豆製品摂取、大豆イソフラボン摂取量と認知機能との関連について検討した。さらに、縦断的解析においても豆類摂取が認知機能低下に対する影響について検討を行い、その結果を次年度の学会で発表する予定にしている。これらの成果に加えて、豆類の中でも特に、大豆製品や大豆イソフラボン摂取に着目して、認知機能低下に与える影響について更なる詳細な検討を進めており、原著論文にまとめる予定である。このほかにNILS-LSA参加者のデータを用い、豆類、大豆製品、大豆イソフラボンなどの摂取量が10年間でどのように推移しているかについて、全体、男女別などで検討を進めている。当該年度において得られた成果は、本研究の目的を達成する上で重要な知見になると考えられる。また今後の研究遂行に必要な予備知見を得ることができたことで、次年度においても研究が順調に進展するものと考えられる。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性は申請書に記載した通り進める予定である。平成28年度は引き続き、豆類、各種大豆製品摂取量と認知機能との関連を縦断的に検討する。同時に、大豆に含まれる機能性成分のひとつである大豆イソフラボン摂取量と認知機能との関連性についても詳細に解析し、認知機能低下を予防する可能性の高い大豆製品や大豆中成分の同定を行う。これらの解析結果を踏まえた上で、どのような大豆製品をどの程度摂取していることが認知機能の維持あるいは低下予防に有効と考えられるかを疫学的に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度より徳島大学への異動が生じ、計上していた調査スタッフ等の人件費・謝金の使用計画に変更が生じたことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の平成28年度での使用計画は以下のとおりである。 当該年度に購入できていなかった本研究に関連する食品および認知機能、統計解析に関わる書籍、ならびに資料整理用の器具を、購入物品費として購入する予定である。また、消耗品としては、次年度以降のデータ解析や成果発表等で必要となるソフトウエアを追加で購入するために使用する。さらに、現在までに行った本研究に関連した成果を原著論文として現在まとめており、これらの英文校正および論文投稿費用として使用する。
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Research Products
(2 results)