2016 Fiscal Year Research-status Report
柔らかな科学コミュニケーションにおけるアナロジー活用のデザイン原則
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15K16244
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥本 素子 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10571838)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 科学コミュニケーション / 双方向 / 対話 / 市民 / 場のデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、柔らかな科学コミュニケーションを実施するため、芸術祭という非科学空間を活用したサイエンスカフェを実施し、その中でのコミュニケーションの分析を行った。計8グループとの対話を分析したところ,科学コミュニケーションを期待していない市民との対話においては脱線し世間話に終始してしまう場合もあった。一方,科学がよく話題にのぼったグループは市民も科学者もどちらも科学の話題を提供しているという傾向があった。また科学以外の話題が多く語られたグループであっても,対話の場に関連する話題をよく話すグループは、市民側から積極的に科学の話題提供が行われていたことが明らかになった。その為、対話の場の認知が低関与層との科学コミュニケーションにおいては重要ではないかという示唆を得た。 前述の分析で明らかになった場の効果についてさらに検証するため、平成28年度に京都市内の文化施設を利用してお茶会形式で科学を語る会を2回実施した。そこでの場に言及した発言の分析より、お茶会には次のようなお茶会のコミュニケーションを活性化する要素が確認できた。 (1) 茶室や茶道具から始まる科学の身近な話題、(2) 閉じた空間が生じさせる自己開示、(3) 狭い空間の距離感の近さが生じさせる親密性 このように、お茶会という場のデザインを援用するだけで、コミュニケーションの性質が変化することが明らかになった。平成29年度に本研究では、科学コミュニケーションの場のデザインの要素について本格的に検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量的、質的分析を行うことによって、柔らかな科学コミュニケーションにおける双方向的対話が成立する要素が明らかになってきた。一つは場への認知、二つ目は場そのもののデザインがコミュニケーションを活性化する可能性である。 当初予定した柔らかな科学コミュニケーション推進要因が明らかになったことによって、本研究は当初の目的を予定通り達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
場のデザインのもたらす効果を中心に実施された対話の分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究計画は順調に推移しているが、論文化に時間がかかり必要な支出が実施できていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本調査のデータの蓄積を目指し、実験調査を実施する。その為の費用として支出する。さらに、国内外へ積極的に成果を報告することを目指し、その発表費用に支出する。
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