2017 Fiscal Year Research-status Report
柔らかな科学コミュニケーションにおけるアナロジー活用のデザイン原則
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15K16244
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
奥本 素子 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10571838)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 科学コミュニケーション / 対話 / 市民 / 場のデザイン / 双方向 / 質的研究 / トライアンギュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、柔らかな科学コミュニケーションを実施するため、芸術祭という非科学空間を活用したお茶会形式のサイエンスカフェ(以下、差の湯の会)を実施し、その中でのコミュニケーションの分析を発展させるため、これまでの質的研究データを量的に分析するため、各対話の対話量を算出しようと試みた。 本研究では全ての発言を書き起こし、他者からの返答のあった部分の最初のきっかけになった投げかけを「話題」として抽出し、その結果、本対話で「話題」は「科学の話題」、「差の湯の会の話題」、「世間話(科学にも茶の湯の会にも関係ない話)」「その他」に大別した。分析の結果、最も多いのが世間話であったが、対話が長く続いたことを示す平均返答数や返答数の中央値は科学の話題のほう方が多いことが分かった。 次にグループ間の分析から、科学対話量と双方向的な科学の対話量は単純な相関関係にはないことが示唆されたため、科学者からの話題提供と市民からの話題提供が与える科学の話題全体の対話量への影響を重回帰分析で分析したところ、科学の話の盛り上がりは科学者の話題提供と共に市民からの話題提供された話の盛り上がりにも強く影響を受けていることが分かった。さらに、従属変数に市民から提供された科学の対話量(返答数で重み付け)を指定し、科学の話題、差の湯の会の話題、世間話の返答数を独立変数に指定し重回帰分析を行った。その結果、科学の話題の対話量と差の湯の会の話題の対話量が、市民の科学の話の話題提供には影響を与えていることが分かった。 この結果から、科学の対話が盛り上がるためには、科学者主導で盛り上げる場合と市民と双方向で盛り上げる場合があることが分かった。また、市民が双方向で話題を提供し、対話を盛り上げる場合には、まず科学者側やファシリテーター側から対話の場の説明を丁寧に行うことが重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は論文化を行い、実際に査読付き論文に採録が決定した。 しかし、今回は話題のカテゴリーの分類のみで、市民が科学的対話にどのように参画したかというところまでは詳細な分析が及んでいない。その理由として、論文化にあたり、分析手法の開発が必要だったことが挙げられる。本研究では、質的なカテゴリー分析と量的な重回帰分析を組み合わせるトライアンギュレーションの手法で、対話のメカニズムを分析していった。その結果、内容に即した傾向を読み解くことができたが、質的と量的分析の組み合わせを開発する点において、調査と研究が必要になり、当初の計画まで分析が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、内容分析を深め、市民が科学的対話にどのように参画していくかという観点を質的に分析していく必要があるだろう。そこで、2018年度は内容分析を進めていき、双方向的対話がもたらす科学技術コミュニケーションの効果とそのメカニズムの解明を目指す。 具体的には、時系列での対話の推移というものを分析し、どのような話題の過程が市民の科学的話題の参画に影響を与えているのかを明らかにしてく。
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Causes of Carryover |
科研費期間中に産休を取り、当初の計画通りに研究を遂行できなかったため。
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