2016 Fiscal Year Research-status Report
意欲と探究能力をともに伸ばす中等教育の探究活動の指導法
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15K16245
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 科学探究能力 / 評価法 / 高校生 / 課題研究 / スーパーサイエンスハイスクール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中高生の科学に対する意欲と科学探究能力を向上させる指導法を開発するために,科学探究能力の評価ツールの作成および,それらを用いて,指導法と探求能力の関係の解明を目的としている。平成28年度は主に以下の2点について研究を実施した。 (1)科学に対する意欲と科学探究能力を定量化する評価ツールの完成 平成27年度に作成を開始した探究能力調査ツールを完成させた。先行実施した156名の解答と39名のインタビュー調査から,調査問題の妥当性を評価した。偽誤答,偽正答を減らすために,調査問題と評価指標の最適化を繰り返した。作成した評価ツールは,科学探究能力を6のカテゴリーに定義し,意欲・情意を加えた7カテゴリーの各能力を,10以上の多段階で定量化可能である。日本語版と併せて英語版も作成した。 (2)日本の高校生に対する大規模調査の実施 日本のスーパーサイエンスハイスクール(SSH) 指定校を中心に,高等学校14校に探究能力の調査問題を提供し,当初計画の10倍近い約5000名の高校生から解答を得た。作成した評価指標を用いて全解答の結果を集計し,傾向を分析した。指導方法により各能力の得点率の高低にばらつきが見られた。評価ツールを用いて調査した全14校を訪問し,課題研究の指導教諭から指導法についてインタビュー調査,指導現場の実地調査を実施した。米国の2高校に対して探究能力調査問題を提供し,参加協力を得るとともに,指導教諭から指導法についてweb上でインタビュー調査を実施した。以上の状況について,4件の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高等学校において理数の課題研究など,探求活動を経験する生徒の科学に対する情意面と科学的な探究能力の変容を調査し,各学校の指導方法との関係を解明することにより,効果の高い指導法の開発を目的としている。現在の進捗状況を次の2点に分けて報告する。 (1) 日本の高等学校における探究活動の動向調査 科学技術振興機構(JST)から公表されている平成17年から24年までのスーパーサイエンスハイスクール(SSH)全指定校の研究開発実施報告書の内容を調査した。調査項目は研究開発課題,課題研究の指導法,研究内容,評価方法であり,8年間の動向と変容を明らかにした。 (2)科学に対する意欲と科学探究能力を定量化する評価ツールの開発および運用 探求活動の教育効果測定のために,探究能力を次の7つのカテゴリーに分けて定義した。能力カテゴリーは,意識・情意,科学的課題の設定能力,仮説設定能力,検証方法の立案能力,実験を遂行する能力,結果を解釈し結論を出す能力,結論を評価する能力,の7つである。先行実施した被験者156名の解答を分析し,加えて39名にインタビュー調査を実施し分析した。調査問題の偽誤答・偽正答の有無や原因を分析し,問題の修正を繰り返して修正した。これらの結果を分析して能力の定量化指標を完成させた。SSH指定校を中心に14の高等学校に調査問題を提供して,当初計画を大きく上回る5000名を超える高校生から解答を得た。学校毎に7カテゴリーの能力の高低に差が見られ,指導法や課題研究の取組状況による差を明らかにした。14の高等学校を訪問し,指導教諭から指導法の詳細をインタビュー調査をするとともに,指導の現場の実地調査を行った。探究能力調査問題の英語版を作成し,米国イリノイ州の高等学校2校の教員に提供し,調査実施に向けて日常的な議論を開始している。両校で高校生計47名に対して先行実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたすべての高校生の調査問題の結果を詳細に分析する。学校毎の分析だけでなく,個々の生徒の課題研究への取組状況,研究内容などにも着目して解析する。これまでも2校で実施してきたが,国内の非SSHの高等学校にも新たに協力を依頼し,探究能力調査のデータを収集し,学校間比較により課題研究の教育効果を明らかにする。既に調査を実施している14校については引き続き2回目の調査を実施し,集団および個の,科学探究能力の変容を追跡調査する。評価ツールの妥当性を確保するために,高等学校のデータや教員のインタビュー調査の結果を基にツールの改良を行う。ツールの改良には高等学校の教員に参画していただき,調査問題の精選,評価指標の妥当性と,自由記述形式から多肢選択式への転換を検討する。併せて英語版にも反映させ,米国のデータを収取し比較する。米国の協力者との連絡はwebを通じて情報交換する。 効果の確認された指導法をまとめて一般の高校生向けに教材化し,効果を検証する。実践は非SSHの理数科設置高等学校において行う。すでに実践校を選抜し,昨年から実践を開始している。
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Causes of Carryover |
高等学校での科学探究能力調査の実施にあたって,当初計画よりも旅費のかからない近隣の東海地区の高等学校を中心に実施したことや,米国等遠方とのコミュニケーションにはwebを使用したことにより,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在は高等学校での実地調査を拡大して実施する段階となっており,国内取材校への旅費,取材のための消耗品,記録用備品,webによる調査費用などに使用する。当初計画よりも調査対象校が増えており,それに伴う費用に使用する計画である。
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Research Products
(5 results)