2015 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧種の野生復帰事業にかかる野生生物保全教育の意義と課題の析出
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15K16248
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
本田 裕子 大正大学, 人間学部, 講師 (00583816)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 住民意識 / 野生復帰 / コウノトリ / アンケート / 意識啓発 / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、コウノトリの野生復帰事業に焦点を主にあて、野生生物保全教育に向けてまずは住民意識を把握することを行った。豊岡市では、最初の放鳥から10年目を迎える節目であり、多くのコウノトリが野外で定着し、特に農作物の付加価値としての役割を地域の中で果たしている。研究では野生復帰事業に関わる行政・保護団体・市民を対象にした聞き取り調査およびアンケート調査を実施した。聞き取り調査では、例えば、コウノトリをシンボルにした農産物などの販売は好調であり、今年度イタリアで開催されたミラノ万博では日本館の展示のシンボルにコウノトリが選ばれ、本格的な海外輸出の契機となった。しかし、このような取り組みが豊岡市内でPRされるよりも豊岡市外でPRされることが多く、市民の中で、「コウノトリとの共生」が生活の中で実感される機会が薄らいでいる、という課題も把握できた。アンケート調査では、2015年11月に豊岡市民1000人を対象とした調査を実施した。多くの回答者はコウノトリおよび野生復帰事業に肯定的であり、コウノトリを「地域のシンボル」とする捉え方がより確かなものとなっていた。そして、コウノトリの野生復帰事業は、兵庫県豊岡市だけではなく、千葉県野田市や福井県越前市においても飼育コウノトリを譲り受ける形で野生復帰を目指した取り組みが進められ、野田市では2015年7月、越前市では2015年10月にそれぞれコウノトリの放鳥が実施された。そのため豊岡市だけではなく、越前市で聞き取り調査やアンケート調査を実施した。また野田市でのアンケート調査には協力を行った。これら野田市や越前市ではコウノトリを「自然環境の象徴」とする捉え方が多く、「地域のシンボル」とする豊岡市とは異なる傾向を有していることを把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はコウノトリの野生復帰事業に焦点をあて、最初の放鳥実施から10年目を迎える兵庫県豊岡市、また新たに放鳥を実施した千葉県野田市や福井県越前市を事例として調査研究を行なった。兵庫県豊岡市や福井県越前市では市民を対象にアンケート調査を実施し、それぞれのコウノトリおよび野生復帰に対する住民意識の特徴を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、明らかになった住民意識をもとに、どのような普及啓発を実施していけばよいのか、という問題意識をもとに取り組んでいくこととする。具体的には、学校での教育活動の中で、野生復帰がどのような位置づけとなっているのかを明らかにしていく予定である。また、大人を対象にした環境教育活動において、野生復帰がどのような役割を担っていくのかについても明らかにしていきたい。また事例間比較として、豊岡市、野田市、越前市の比較はもちろんであるが、トキの野生復帰事例(新潟県佐渡市)やツシマヤマネコの野生復帰計画(長崎県対馬市)など他事例との比較も行っていく。
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Causes of Carryover |
資料購入が進まなかったため、次年度への繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度中に繰越部分は完了する予定である。
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